2011-01-01から1年間の記事一覧
Yさんが転勤になり、引越しのために荷物をまとめていたときのこと。 収納の奥に、しばらく前から見当たらなくなっていたアルバムを見付けた。 学生時代の写真を収めていた一冊である。懐かしさのあまり、ついつい手を休めて見入ってしまった。 その内の一枚…
写真が趣味のUさんは、連休を利用して撮影旅行に出かけた。 電車を乗り継いで、隣県の山奥の民宿に泊まり、周辺の山や史跡を撮りまくった。 投宿して二日目の夜のことである。 その日もあちこち歩き回ってだいぶ疲れていたので、翌日に備えて早々に布団に入…
Tさんが高校生だった時の話。 休日に同級生の家に遊びに行った。 初めて訪ねたその家は二階建ての日本家屋だったのだが、その屋根に誰かが座っているのが見えた。 屋根の修繕でもしてるのか?と思ったが、よく見るとどうやら作業服姿ではない。灰色っぽいス…
ある中学校で修学旅行の写真が出来上がったので、プリントして模造紙に貼ったものが廊下に張り出された。 写真には一枚ずつ番号が振ってあるので、生徒達が欲しいものを焼き増し注文できるようになっている。 早速、休み時間には廊下に人だかりができた。 そ…
あるカップルが休日にドライブに出かけ、帰る頃にはすっかり暗くなっていた。 彼女の家の方角に続く国道を走っていた時のこと。 前後に他の車のライトも見えず、道はずっと緩やかなカーブを描く一本道で、制限速度を十キロ以上越えるスピードを出していた。 …
Hさんが中学二年生のとき、父親が失踪した。 職場にはなぜか辞表を提出しており、誰も行き先に心当たりがなかった。 捜索願が出されたものの、結局一年経っても見つからない。 仕方なくHさん一家は住んでいた家を引き払い、母親の実家に身を寄せることにな…
三十年ほど前の話だという。 Tさんという男性が転居した。 結婚したばかりで、奥さんとお互いの職場に通いやすい街に住もうということに決めたのである。 引っ越してすぐ、近所を夫婦で散策していた時のこと。 買い物をするにはどこの店がよさそうだとか、近…
Mさんが大学生の時の話。 親元を離れて下宿していたMさんは、連休を利用して帰省することにした。 電車を乗り継いで最寄の駅に着いた時には午後四時を回っていて、日が傾いていたという。 駅から家に向かって歩いて、家がもうそろそろ見えてきそうな頃、向こ…
休日の朝、Kさんの部屋にアパートの管理人がやってきた。 「下の部屋で、天井に水が染みてるって苦情がきたんですよ。床に水とか零しました?」 そう言われてもKさんには心当たりがないし、部屋の畳も特に変わった所がない。 しかし下の部屋の水染みもなか…
たぶん ぜんせかいで ごにんくらいだとおもわれる どくしゃのみなさまへ すみませんが bachihebiのやろうが たぼうのため こんしゅうと らいしゅうは 奇談の こうしんは なしということで
夏のある日、Fさんが庭の草むしりをしていた時のこと。 しゃがみこんで一心に草を抜いていると、何かを軽く叩くような音が聞こえてきた。 ぱしっ。ぱしっ。 ぱしっ。 近所で子供が縄跳びでもしてるのかしら。 しかし、縄跳びにしては音の間隔が長いような気…
Dさんが出張先の長崎でビジネスホテルに泊まった夜のこと。 早めにベッドに入って、ぐっすり寝ているところを誰かに揺り動かされた。 何事かと思って目を覚ましたDさんに、その誰かが話しかけてくる。 「なあ、ちょっと」 部屋の明かりは寝る時に消したの…
夕方、主婦のEさんが買い物から帰ると玄関に靴が沢山脱いであった。 革靴やらスニーカーやらが合わせて十足ほど、綺麗に揃えてある。どれも家族のものではない。 スニーカーが混ざっているあたり、息子が友達を連れてきているのだろうと思ったところ、案の…
Mさんが学生時代に所属していたテニスサークルは、毎年夏休みに五日間の合宿を行うことになっていた。 合宿は県内の避暑地として有名な町で行われるのが通例だったが、Mさんが大学三年生の夏は手違いにより、毎年利用している合宿所の予約が取れなかった。…
Kさんが高校時代に所属していた演劇部の部室は倉庫として使われていて、大道具やら小道具やらが所狭しと押し込められていた。 その一番奥の方に一台の古い鏡台があったのだが、これが曰く付きの品とかで舞台には使わないことになっていた。 どういう経緯で…
小学校教諭のMさんが同僚に電話をかけたときのこと。 応対する同僚の声の向こうから、女性と幼い子供の声が聞こえてきた。 何を言っているのかはよく聞き取れなかったが、その楽しそうな声の調子から、奥さんと子供だろうとMさんは思った。 その同僚はその…
Fさんの通っていた中学校には「資料室」と呼ばれる部屋があった。 資料と言っても授業に使うものが仕舞われている訳ではなく、地元の古い民芸品やら古い本やらといった郷土史の資料がただ納められているだけで、大抵の生徒はほとんど足を踏み入れることなく…
Oさんが子供の頃、近所に廃車置場があった。 当然、部外者は立ち入り禁止だったが、敷地も広く大人の目も届きにくい。 いつのまにか、悪ガキたちが潜り込んで遊び場にするようになった。 Oさんもその中の一人で、学校が終わると友達と一緒になってここで遊…
アパートの軒先に毎日豆腐が置かれていたことがあった、とHさんはいう。 ある朝出勤しようと部屋を出ると、目の前のコンクリートの上に豆腐が一丁、ぽつんと置いてある。 パック入りではなく、剥きだしの豆腐。 まだ置いたばかりらしく、豆腐はじっとりと濡…
京都にあるクリーニング店の話。 店舗の奥の、預かっている服を吊るしておく部屋の一隅には、いつも空いているスペースがある。 そこにもハンガーを掛けるための竿が渡してあり、吊るそうと思えば十着くらいは吊るしておけるのだが、そうしない。 どんなに他…
山歩きを趣味にしている、ある人の話。 秋頃に神奈川と山梨の境目あたりの山を歩いていた時のこと。 特に人気のある山でもないので山道には他に人影もなく、色づき始めた木々を眺めながらのんびり歩いていた。 すると、前方から何かを勢いよく引きずるような…
Oさんが子供の頃、夏休みに母親の実家に遊びに行った時の話。 母方の祖父は釣りが趣味で、Oさんも遊びに行ったときにはよく同行していた。 この時も祖父と一緒に釣りに行ったのだが、祖父が足を向けたのはそれまでOさんが連れて行ってもらったことのない…
Fさんが通っていた高校では、自転車で通学する生徒が一人もいなかった。 別段、校則で禁じられていたわけではない。以前はそれなりの人数が自転車で通っていた。 ある頃を境に誰も自転車に乗らなくなったのは、こういう経緯があったらしい。 Fさんが二年生…
Yさんの実家には古い木造の倉があった。 造られてから百年は軽く経っているという年代物である。 この倉を、年に二回ほど家族総出で大掃除する。 Yさんが小学生の頃、この大掃除について気が付いたことがあった。 お父さんが、ある物を必ず真っ先に拭くの…
ここ数年、市の警察署から自動車の盗難に注意すべしという勧告が何度も出ている。 実際、車の盗難が多発しているらしい。 今日、その窃盗犯のやり口について話を聞いた。なかなか興味深かったので紹介したい。 犯行はかなり組織的に行われているらしい。以下…
十五年ほど前の話。 Fさんはある時、公園で開かれたフリーマーケットに行った。いくつか気に入ったものを買ったが、その中に銀色のイヤホンがあった。 今まで使っていたカセットプレイヤーのイヤホンが壊れてしまったので、その代わりとして丁度いいと思っ…
アニメが次々と最終回を迎えてゆく。気に入っていた作品が終わりを迎える寂寥感もアニメ視聴の醍醐味よ。 『Aチャンネル』。OPは凝っていて好きだったものの、内容は別段面白いとも思わなかったのになぜか毎回観ていた。第一話で小柄な女子が学校でバット…
Uさんは学生の頃に古文書同好会に所属していた。 普段は大学に所蔵されている写本を読んだりして勉強するのが主な活動だったが、時々は校外の所蔵者に頼んで古文書を見せてもらうこともあった。 隣県にある立派な屋敷の旧家に古文書を見せてもらいに行った…
私は大抵の生物について面白いというか興味深いと思っていて、特に嫌いな種はないのだけれど、一般的にはどうもそうではないらしく、特定の生物を忌み嫌う人はなかなか多いようです。 「生理的に嫌い」という言葉は大変便利なので使いたくなってしまう気持ち…
もうそろそろ冬になろうという頃の、ある朝のことである。 起床して自室のカーテンを開けた瞬間、Fさんははっと息を呑んだ。 窓ガラス一面に、うっすらと模様が付いている。 黄色と黒のまだら模様。アゲハチョウの翅の模様だった。 なぜ、蝶の翅模様がそこ…