夏のある日、Fさんが庭の草むしりをしていた時のこと。
しゃがみこんで一心に草を抜いていると、何かを軽く叩くような音が聞こえてきた。
ぱしっ。ぱしっ。
ぱしっ。
近所で子供が縄跳びでもしてるのかしら。
しかし、縄跳びにしては音の間隔が長いような気がする。たどたどし過ぎるのだ。
それによくよく聞いてみると、案外近いところから音がしているようにも思えてきた。
じゃあ何の音?
手を止めて見回したFさんの視界の端で、何かが動いたような気がした。
そちらはお隣りとの境にあるブロック塀なのだが、その下の辺りの地面がモコモコッと動いたという。
するとそこから泥の色をした腕がにゅっと伸びてきて、塀の下の端を叩いた。
ぱしっ。
腕はそのまま動かなくなった。
うわ、何あれ!?
恐る恐るFさんが近付くと、目の前で腕はぼろぼろ崩れてしまって、泥の塊になってしまった。
そして塀には腕の形をした泥の跡が残った。
あまりに気味が悪かったので別の所から持ってきた土でその辺りを埋めてしまって、その上にコンクリートブロックを二つほど乗せておいたという。