2024-01-01から1年間の記事一覧

お寺の来客

Rさんの伯父は栃木でお寺の住職をしていて、Rさんは幼い頃から年に何度かこのお寺へ行った。このお寺にいると時々不可解なことがあった。伯父と話していると特に声や音が聞こえてきたわけでもないのに、伯父がちょっとお客さんみたいだなと言って出ていくこ…

あの色

Rさんの祖父は漁師だったが、六十六歳のときに引退した。七十代でも現役の漁師は珍しくない。祖父も体力的にはまだまだ続けられるだろうと周囲から惜しまれたが、もう潮時だと言って譲らなかった。それから一月くらい後のこと、祖父は自分の子供たちや孫を呼…

銀のバケツ

夕方、高校生のWさんが自宅の門の前まで帰ってきたところ、屋根の上に見慣れないものがあることに気がついた。銀色のバケツを伏せたようなものが二階の瓦屋根のこちら側の斜面にぽつんと見える。バケツだとしたら誰かが置いたのだろう。あるいは下から投げ上…

瞼の裏

ある夜、大学生のRさんはベッドに横になり瞼を閉じたところで、妙なものが見えることに気付いた。瞼を閉じるといつも、暗い中に大小の曖昧な点や図形が無数に現れては消えていくのが見える。ところがこのときはそうした無数の明滅の隙間に、人の顔が見えた。…

指先の埃

Mさんが自宅で仕事中のこと。パソコンに向かってずっと作業をしていたが、肩こりがひどい。同じ姿勢で画面を見つめ続けているから目と肩がつらい。一時間に一度くらいは立ちあがって体を動かすようにはしているのだが、それでも締め付けるような痛みが消えな…

本家の蔵

Nさんの実家の近所には祖父の実家があり、Nさんの家族は本家と呼んでいた。Nさんの両親は共働きで、祖父母も早くに亡くなったので、日中は家に人がいなくなる。そのため、Nさんは小学生の頃は学校から自宅に直接帰らず本家に行き、両親の仕事が終わるまで面…

バニラ香

二年ほど前、高校の教室でのこと。午前の休み時間、ふっと甘い匂いが漂うのを教室にいたほとんどの生徒が感じた。バニラのような甘い香りだ。誰かがお菓子を食べている程度では、教室じゅうに匂いが充満するのは考えにくいし、誰もそれらしきものを持ってい…

変な獣

栃木でスーパーに勤めるHさんの話。夜十一時頃、友人のEからSNSを通じてメッセージが来た。 今変な獣ひいたんだがw 続けて写真が貼られていたが、開いても真っ暗で何が写っているか全くわからない。 なんぞこれw そう返信したが、それ以上Eからの返事はなか…

影車

Fさんが中学生の長男を塾に迎えに行った帰り道のこと。いつも通る道を車で走っていると、脇の住宅の陰から黒いものがぬっとはみ出してきた。車が出てくるのかと思って減速したところ、黒いものはそのままゆっくりと路上に出てきた。夜だというのにライトを点…

丸石

Eさんは大学三年生の秋に研究室の人間関係トラブルで精神的に追い詰められ、それが原因で体調を崩して休学し、茨城の実家に帰った。何をする気力も湧かず、地元の友人に会う気にもならず、家でゴロゴロするかせいぜい近所を散歩するかという起伏のない日々を…

愚痴

空調整備の会社で働くRさんの話。事務所で書類仕事をしていたが、急にまぶたが重く感じられてきた。眠い。睡眠不足というわけでもないのに、目を開けていられない。どういうことだろう。眠気覚ましに立ち上がってお茶でも飲もうかと思ったのだが、立ち上がる…

味噌汁

Uさんが大学生のときに母親が癌で亡くなった。二年ほどの闘病の結果なので覚悟はしていたが、いざそうなってみるとやはりショックが大きい。葬儀が終わり、遺骨をお墓に納めて、ようやく大学生活に戻ったUさんだったが、どうも以前のような調子が出ない。勉…

年越し当番

Nさんの家の近くに小さな神社がある。地域で大事にされているお社で、年に何度か行事がある。そのひとつが年越しで、当番になった三人がお社の前で火を焚いて夜通し番をする。Nさんもある年の年越し当番のひとりになった。夜十一時頃に社殿の前で火を焚きは…

白いワンピース

Rさんの娘が小学生の頃のこと。小学校への通学路の途中に、一軒の空き家があった。人が住まないまま何年も放ったらかしになっているようで、壁や屋根が一部破れているのが道から見てもわかる。どんなタイミングで更に崩れるかわかったものではない。実際、台…