2007-11-01から1ヶ月間の記事一覧

六十八/ ビンの蓋

アパート住まいのTさんの部屋には、ビンが一本もない。それというのも、ビンを置いておくと勝手に蓋が開いてしまうからである。原因はまったくもってわからない。ともかく、入居した当初にペットボトルやら一升瓶やらが片っ端から開いてしまって以来、どう…

六十七/ 錆びずの槍

Eさんの実家の裏庭に、一本の大きなクスノキが立っている。Eさんの家が建ったのは明治のことらしいが、その木はその遥か以前からそこにあるらしく、樹齢数百年と言われている。その木には古さのほかに、もう一つ特異な点があった。地上から約三メートル辺…

口ずさむメロディーが教えてくれるとか何とか

中学生の時に、あるクラスメートが言ったのさ。「ゲームの音楽のCDとか買うのってダサいっつーか」その発言自体は単なる中二病的な「ゲームとか卒業してポップスとか聴いちゃう俺マジ大人」っていう文脈から出てきたものだったので、当時も(背伸びしやがっ…

六十六/ 不動の書

市の図書館に勤めるAさんに聞いた話。 その図書館には、位置を変えることができない本があるという。ある時、書架のスペースの問題から、一部の古い本を閉架書庫に移すことになった。休館日に出勤して移動作業をしていると、いざ閉架書庫に運び込んでリスト…

六十五/ 猫との旅

Oさんが四歳のときの話。 昼下がり、ふとお母さんが庭で遊んでいるOさんを見ると、Oさんがお菓子の袋を持っていた。台所から持ち出したものだと思い、Oさんを呼んで取り上げると、お母さんが買った覚えのないお菓子だった。通りすがりの人に貰ったのだろ…

夜の歌

主にチャンピオンREDの付録などの女体フィギュアがいくつか溜まってきたのですが、どうすべきか思案しています。何か超面白カッコいい活用法はないものでしょうか。 今のところ最も有力な案は、富士鷹ジュビロ先生の短編「夜に散歩しないかね」の那引のおじ…

海鳴り (66/100)

船乗りだった彼女の夫が、海難事故で亡くなった。彼女は、葬儀が済んでもお骨を手元から離そうとはしなかった。部屋の一隅に設けた簡素な祭壇に、遺影と並べていつまでも骨壷を置いておく。納める墓地に困っているわけではないのに、いつまでも手元に置いて…

銀河仏道の夜

数日前objectO氏が「スペース歓喜仏」という素敵ワードを仰ったので大いに感じるところあり、宇宙仏についてあれこれ想い描いていたところ、脳内涼之介が「宇宙仏師とはいかなるものなのでしょうか」などと言います。アステロイドベルトで延々石仏を彫り続け…

六十四/ 手拭

Kさんが中学二年生の夏休みに、親戚の寺に遊びに行ったときの話。 夕方、外の回廊に面した座敷で一人で宿題をやっていた。森に囲まれているため、蝉の声が喧しかったが、宿題に集中するにつれそれも気にならなくなった。しばらくしてふと集中力が途切れた瞬…

六十三/ 砂場野菜

Uさんは幼い頃、野菜は砂の中に埋まっているものだとばかり思っていたという。というのも、Uさんが近所の公園の砂場で遊んでいると頻繁に砂の中から野菜が出てきたからである。キャベツ、人参、玉葱など種類を問わず、Uさんが掘った砂の中からごろごろ出…

ディレイラマを描いてみた

時代はラマです。剣鬼だってラマ仏ですよ。ジークフリートさんもチベットで修行してましたよ。 私が凡百の萌えボーカロイドよりディレイラマを好むこと山(カイラース)の如しですが、それにも拘らず先に初音某を描いてしまっておりました。五体投地。

六十二/ 子猫の声

Tさんが小学生の頃の話。 仲のいい友達と家の近くで遊んでいた時、どこからか子猫の鳴く声がした。弱々しい声で助けを呼んでいるように聞こえる。声のするほうに行ってみることにした。声はどうも道路の側溝の中から聞こえてくるようだった。見える範囲の側…

六十一/ 不測の欠勤

Fさんはその朝、いつものように車を運転して出勤した。 勤め先の地下にある駐車場に車を停め、車の鍵に手を伸ばした時「あれ? 」と思った。いつもと感触が違う。引き抜いてみると、やはり自分の車の鍵ではない。狼狽しながら視線を上げると、また驚いた。車…

タモリ二題

影武者タモリ 眼帯からサングラスへと変わる際の秘史 人気を妬んだほかの芸人が仕掛けた罠により死に瀕するタモリさん 死の床で付き人に語るタモリさん 「われ死して後、三年はそれを明かしてはならぬ」 「そして影武者を立てるのだ」タモリさんノリノリ 立…