六十三/ 砂場野菜

Uさんは幼い頃、野菜は砂の中に埋まっているものだとばかり思っていたという。
というのも、Uさんが近所の公園の砂場で遊んでいると頻繁に砂の中から野菜が出てきたからである。
キャベツ、人参、玉葱など種類を問わず、Uさんが掘った砂の中からごろごろ出てくる。当然砂まみれなものの、どれも新鮮そうでみずみずしかったという。
なぜかUさんが掘ったときだけしか出てこないようで、他の子供が何事もなく遊んでいたすぐ後にUさんが同じところを掘り返すと、やはり野菜が出てきたということもよくあったらしい。
誰かがわざと埋めていたにしても意図がわからないし、Uさんが掘ったときだけ出てくるのはおかしい。
掘り出した野菜はいつも家にもって帰っていたが、Uさんのお母さんは気味悪がって捨ててしまっていたという。


現在、成人したUさんが砂場を掘っても野菜は出てこない。
「たまには出てきてくれると腹の足しになるんですけどねえ」
そう言って笑った。