2008-01-01から1年間の記事一覧

残照

谷の外は風がつよいです。今まで住んでいた村は谷底にあるおかげであまり風が吹きこまない場所でしたが、もうわたしは戻れない。これからはこの風のつよい、何もないところで暮してゆかねばならないのでしょう。すぐに死んでしまうかもしれない。 わたしが村…

風が冷たかったので書きました。

Yさんが仕事でフランスに行った時のことだという。 宿で眠ったその晩、妙な夢を見た。石畳の坂道の下にいるYさんの足元に、何かがこつんこつんと当たる。何だろうと下を見ると、周りに白くて丸いものがいくつも転がっている。つやつや光るそれらは、殻をむ…

深夜放送

Hさんという男性の話。 深夜、何やら眩しさに目を覚ましたHさんは、暗い部屋の中でテレビが点いていることに気が付いた。テレビの前には奥さんらしき人影が座って、じっと画面を見つめている様子。画面は人影に遮られて見えない。 (こんな夜中に、一人で…

時にはテレビの話を

仮面ライダーキバ。ヒロインがドジッ子→ヤンデレという進化を遂げたのでここしばらく注目度が急上昇。しかしそのヤンデレヒロインも今回ヤンデレ度を下げる行動に出てそのまま退場してしまい残念でならない。もっと最終回までヤンデレを貫いてほしかったのに…

花粉症

しばらくの間ここで怪談を書いていたので、これで私が怪談好きということは人にわかってもらえたんじゃないだろうか、それならひょっとするとこれからは人から不思議な体験談を聞かせてもらえる機会も増えるのではないか、と淡い期待を抱いていたのだが、現…

タモリとドクロと根性植物

明後日に文学フリマを控え、llpp氏の作ったステキTamorization告知ムービーを毎日観ている今日この頃です。 この動画、観ていると何かに似ているような気がするので何だろうと思っていたら、墓場鬼太郎のOPでした。いや、吹き出しがピクピク動くからってだけ…

それじゃ一旦CMでーす

遂に完成してしまった現代の奇書! extramegane編集長の偉大なる幻想! 「タモリ」を芸そのものと捉え、文芸として紙面に再構築! 『Tamorization』 今秋、文学フリマにて堂々発行!! ゆとり世代部のあずみんさんのブース(二階B-18)に委託させていただくことに…

ご無沙汰しております。 続出する死亡事故に対する心痛から蒟蒻ゼリーの生産者が怨霊を幻視し、生涯をかけて蒟蒻ミステリーハウスを建設する小説を書いているうちに10月が終わろうとしています。もうウィンチェスターなんぼのもんじゃいという。蒟蒻マジ最強…

切腹探偵

待望の第一子が元気に産声を上げたとき、隣室に控えていた原田新左衛門は思わず袴を握り締めた。呼吸は最前からずっと詰めたままである。すぐに下女が彼の元に駆けつけて告げた。 ――男の子に御座います―― 新左衛門は溜息を長々と吐いた。

「酒呑童子を大江山で斬り殺す」ネットに殺害予告 23歳武将男を逮捕

タイトルは「犯罪予告メーカー」で作成しませんでした。酒呑童子と捨て童子松平忠輝とどちらにするか迷った。 知人の中学生女子は『ローゼンメイデン』のために『ヤングジャンプ』誌を購読している、と言う。さらには同好の士が周囲に多数存在するとも言う。…

夢一夜

こんな夢を見た。 「今年オリンピックじゃないすか」 「だね」 「で、出場選手がこう、母校を訪問して所信表明、みたいな映像をニュースとかで何度か見かけたんですけど」 「ああ、あるよねそういうの」 「それ見るたびに腹が立って腹が立って」 「何でよ」 …

あをによし奈良の都の三闘神

せんとくん・まんとくんに加え第三の遷都キャラなーむくんが現れたそうで、もう三位一体説といいますか、アシュラマンみたいな形に悪魔合体すればいいじゃない。 でも仮面を取ると全部せんとくんの顔なの。サムソンティーチャー=聖徳太子で。

赤い人

Uさんによると、彼の故郷には「赤い人」が出るという話で、その近辺では有名らしい。なぜか姿はその都度違っているらしく、目撃談によって特徴がバラバラなのだが、とにかく肌の部分が真っ赤で、ひと目でそれと判るらしい。 Uさんが見たのは春先だったとい…

暑くなってきたから。

蛇を踏みました

先週のある日玄関から一歩踏み出した瞬間、足の裏にぐにゃりとした感触を覚えました。違和感から咄嗟に足を上げると、足元を逃げていく一メートルほどの長虫がいました。気持ちよく伸びていたところを踏みつけてしまったものでしょうか。このあたりで目にす…

ついでにこの大叔父の日誌について少し補足しておきます。 数年前のことです。我が家の仏壇の引き出しから、五冊の小冊子が見つかりました。 表紙には「生徒日誌」とあり、その脇に大叔父、つまり私の祖父の弟の名前が書いてありました。どうやらこれは、大…

昭和十一年の未確認飛行物体

大叔父の旧制中学時代の日誌に気になる記述がある。昭和十一年十一月十八日、大叔父が中学一年生のときの記事だ。 僕等が吉田駅*1附近で奇怪なものには目をあいたままぼう然とした。そのありさまは口や筆には言いつくせない程であった。――日吉村*2附近の空に…

血豆がたり(70/100)

部屋を出ようとした時、足の小指を柱の角にぶつけた。強くぶつけたせいで余りの痛みに数秒間悶絶する。何とか一息ついたものの、ぶつけた小指は付け根あたりから感覚がない。靴下を脱いでみると、小指の先が暗い紫色に変色していた。血豆ができている。 血豆…

釈迦! もっとも仏に近い男

チベットが迫害されてるのは今に始まったことでもないのに俄に盛り上がっていますねこんにちは。それも今のうちで、オリンピック終わったら沈静化するんでしょうね。 まあ聖火リレーやら五輪関連式典やらにちょっかい出している人は、そうさせないために世論…

おわりに

以上、全百話をもってkwaidanは一区切りということになります。読んでくださった方、ありがとうございました。 一晩で全部読めば百物語を完遂したことになり、何か起きるかも知れません。モニターから毛が生えた! とか。実際に何か起きたらご一報ください。…

百/ 定期演奏会 その四

この定期演奏会に関する一連の話は、私が高校生の時にSさんから聞いたものである。私自身、Sさんが所属していた吹奏楽部の十期ほど後の部員で、私が高校生だった当時SさんはOBとしてよく現役の活動をサポートしてくれていた。この話を聞かされたのは、…

九十九/ 定期演奏会 その三

前日のアクシデントが嘘のように本番はほぼ滞りなく進み、三部構成の二部までを終えた。 十分間の休憩を挟んで、さあいよいよ三部が始まるというときに、会場である体育館の天井がダーッ! と大きな音をたてた。どうやら雨が降りだしたらしい。屋根が高いから…

吸血鬼とバケモノとマクロの空と鹿とカブトガニ怪人

あまりテレビを見ない私ですが、『仮面ライダーキバ』は毎週観てます。 『キバ』は吸血鬼がモチーフということで、放送開始前は「素手で怪人を引き裂くハードでバイオレンスなダークアクションだといいですね」などと期待していました。だって脳内ヘルシング…

九十八/ 定期演奏会 その二

リハーサル中もおかしなことがあったという。 曲の通しの間、指揮者が怪訝そうな顔をしている。しかし演奏については特に口出しをしない。ならば音以外のことについて何か気がかりなのだろうか。Sさんはそれがずっと気になっていたが、とりあえずそのままリ…

九十七/ 定期演奏会 その一

Sさんが所属していた吹奏楽部は、毎年六月に定期演奏会を開催していた。現在、同校の演奏会場は市の文化会館を使用しているが、当時はまだ文化会館が存在しておらず、市内にある市営体育館を借りて開催していた。Sさんが三年生のとき、すなわち彼の現役最…

夏目ハード

google:三四郎 それから 門 漱石の三部作を検索したはずなのにシヲン三浦ばっかり出てくるのは一体何だというのか。オーウ、ファーックって脳内社長が言ってますよ。 『漱石ハード』 沙翁研究の為に倫敦に潜入する漱石。だが、それは子規の巧妙な罠だった。…

九十六/ 二人目

また、こんなこともあった。 ある日、Sさんが朝練をしようと音楽室に行くと偶々一番乗りだった。しばらく一人で練習していると、パッと扉が開いてトランペットのOさんが入ってきた。Sさんが挨拶すると、Oさんもおはよう、と言って奥の部屋へ入ってゆく。…

九十五/ 空耳

二十年近く前、高校生だったSさんは学校の吹奏楽部に所属していた。 ある時、クラスの用事で練習に遅れた彼が練習場所である音楽室に向かうと、到着しないうちに合奏が始まってしまったようで、音が廊下にも聞こえてきた。しかしそれを聞いて、Sさんはいさ…

きれいなジャイアン「おれは母ちゃんのどれいです」

タイトルは内容に関係ありません。ジャイアンに限らず、運命とは『眠れる奴隷』ですね。第五部・完。 コンニャクって煮物に入れると他の具より味が染みるのが格段に遅いため、いつも手を出すのを躊躇ってしまうので、煮物などのために味付のコンニャクを開発…