2014-01-01から1年間の記事一覧

披露宴

浜松町のホテルで結婚披露宴が行われた時の話。 新婦友人として出席したTさんが新婦お色直しの間にお手洗いに行った。 用を足して戻ってきてみると、会場の雰囲気がどことなく違う。 まだ新婦は戻ってきていないようだが、照明か何かが変わったのだろうか。 …

よいお年を。

麦藁帽子

海辺の町でのこと。 男子高校生が数人で素潜りして遊んでいたところ、そのうちの一人が海面に顔を出してから怪訝な顔をした。 仲間たちが理由を尋ねると、水の中で変なものを見たという。 何を見たんだ、と聞いたものの、うまく言えないと首を振る。 そこで…

灰色

Nさんが彼女の住むマンションでくつろいでいた時のこと。 つい今しがたまで一緒にいた彼女はお風呂に入っていて、部屋にはNさんがひとりでソファーに寝そべっていた。 彼女の作ってくれた夕食も満足で、Nさんはすっかりいい気分になってついつい眠くなってし…

行列

中学校の休み時間でのこと。 廊下の窓からは校門と中庭が見下ろせる。 校門の方から誰かが入ってきたことに生徒の一人が気付いた。 女性のようだったが、その姿が妙に青い。 青い服を着ているというだけではなく、髪も顔も全身がペンキを塗ったように鮮やか…

天井裏

Mさんは月に一回くらいの割合で実家に行っている。 Mさんたち姉妹がみな嫁ぎ、やがて母親が亡くなり、一人残った父親も老人施設に入ってからは実家には誰も住んでいない。 そこでMさんがときどき掃除や家財の整理のために行くことにしているのだ。 ある時Mさ…

部屋の中

真夜中のこと。 高校生のTさんが二階の自室で寝ていると、窓ガラスを誰かがバンバン叩く音で目が覚めた。 ベランダに通じる窓にカーテン越しに人の影が映っているのが見える。 不審者か!?と身構えたが、近寄ると窓の向こうから小さな声で呼んでいるのがわ…

出て行く

大学生のFさんが友人の住むアパートに初めて遊びに行った時のこと。 友人の部屋のある3階でエレベーターを降り、部屋番号を確かめながら歩いてゆくと眼の前でドアがひとつ開いた。 中からは背広を着た七十歳くらいの白髪の男が出てきて、部屋の中に深々と頭…

壁際

中学校の宿泊学習でのこと。 二泊三日の一夜目、Hさんはふと深夜に目を覚まし、トイレに行こうと部屋を出た。 トイレは廊下を曲がった先にある。 廊下は明かりを点けっ放しにしてあったので夜中でも特に怖く思うこともなく、Hさんは用を足してトイレを出てき…

クローゼット

Nさんがインフルエンザで寝込んでいた時のこと。 39度を超える高熱が出て苦しさのあまり眠ることもできず、布団の中で荒い息を吐いていた。 すると熱に浮かされたか、部屋の中がどこかいつもと違ったように感じられる。 朦朧とした意識のまま目だけ動かし…

犬吠埼

銚子にある犬吠埼灯台でのこと。 Yさんという女性が家族と一緒にここを訪れた 家族は灯台の上に登りたいと言いだしたがYさんは高所恐怖症なので、彼女を残して夫と二人の娘が灯台に入っていった。 五分位経って灯台の上に三人が姿を表し、Yさんは見上げなが…

たすけて

春先のことだという。 Hさんが当時付き合っていた女性と伊豆の海に行った。 海水浴シーズンでもないので他に人の姿はなく、二人で海を見ながら砂浜を散歩していた。 すると背後から女性の声が聞こえた。 「誰か、誰かたすけてえええええ!」 その必死な声に…

マネキン

Fさん家族がキャンプに出かけた。 キャンプ場の隣の土地は1メートルほど高くなっていて、果樹園になっていた。 到着してすぐにFさんがそちらを見たところ、そのリンゴか何かの木が並んでいる中に交じって何人か人が立っている。 しかしよく見るとそれはどう…

10月に入ってセミも鳴かなくなり、残暑も治まってようやく秋らしくなってきた今日このごろです。夏の間に散髪していなかったので髪がいい加減鬱陶しく感じられてきて、先日とうとうバリカンを買って自分で坊主頭(ブッダ・プリースト・スタイル)にしました…

黒い革靴

中学校からの帰り道、Eさんがいつものように自転車を漕いでいた。 しかしその日に限って、どうもハンドルが重く感じられる。 鞄はいつも後ろの荷台にくくり付けてあるから、ハンドルの前の籠には特に何も入れていない。 にもかかわらず、そこに重いものを入…

いいもの

大学のキャンプ同好会での話。 Nさんを含むメンバー五人が夏休みの活動として栃木のキャンプ場へ行った。 カレーを作ってみんなで楽しく食事をとり、近くの温泉に出かけて入浴し、テントに戻って各々眠りについた。 夜中、Nさんは誰かに呼ばれたような気がし…

鼻歌

大学の近くにある学生寮の話。 親元を離れてこの寮で暮らし始めたHさんは、三階のトイレの真ん中の個室に入った時に誰かの鼻歌を聞いた。 はっきりとは聞こえないが、女の人が機嫌良さそうに鼻歌を唄っているようだった。 最初は特に気にしていなかったが、…

残っている生徒

とある大手学習塾の、茨城の某所にある教室での話。 夜10時過ぎ、教室長が電話で上司と打ち合わせをしていた。 仕事が11時くらいまでかかることも珍しくない。 その日もやっとのことで翌日の会議の準備を終えて、その電話が終われば帰れるところだった。 打…

エレベーターの中

もうひとつ、似たような話がある。 こちらは夕暮れ時の出来事。 高校生のEさんが自宅のマンションに帰ってきて、いつものようにエレベーターの前に立った。 すぐに箱が降りてきて、眼の前で扉が開く。 中には一人乗っていて、目が合った。 咄嗟に目を逸らし…

車庫の中

細かい雨が降る夜のことだったという。 Kさんが仕事から帰ってきて、いつものように車を自宅の車庫に入れようとした。 車庫の前の路上で車を降りると、車庫のシャッターを両手で掴んで引き上げる。 その途端、強烈な違和感を覚えて身構えた。 目の前、車庫の…

土の下

中学校で運動会の前日に準備をしていたときのこと。 その学校の運動会では選手入場門の支柱として、丸太を二本立てるのが毎年のやり方だった。 そのためにスコップで校庭に穴を掘っていた生徒たちが、なぜか手を止めて穴の中を眺めている。 地面に膝をついて…

犬と脚

ある人が奥さんの実家に行った時の話。 車で五時間かけての道のりで、到着した時にはすっかりくたくたになってしまい、義父母に挨拶してから少し休ませてもらうことにした。 奥さんは義父母と話をしているので、ひとり客間で横になっていたところ、気が付く…

スイカ割り

Uさんは高校二年生の冬休みにバイクで事故を起こし、足を骨折して入院した。 思うように動けず、寝たきりのためストレスが溜まるばかりで、そのせいかある晩にひどい悪夢を見た。 気が付くと砂浜に首だけ出して埋められている。 抜けだそうとしても指一本動…

たたり

千葉県立博物館大利根分館で開催された「林家正雀 怪談噺の会」に行ってきました。 木戸銭千円で噺家の怪談が聞けるってんで行ったんですが、企画展で谷中全生庵の幽霊画コレクションを借りてきてあるというんでそれも観てきました。 圓朝が集めたという全生…

灰色の人型

Tさんが銚子の海に釣りに行った。 夕方から港の堤防で釣っていたが、何だかその日は全く成果がない。 もっとも、そのポイントは日によって当たり外れが大きいのでそれほど気にせず、もう少ししても釣れなかったら場所を移そうと思っていた。 穏やかな波をぼ…

湧き水

高校の夏休みでの話。 午前中、幾つかの運動部がグラウンドで練習していると、数人の先生がプレハブの体育倉庫の前に集まってきた。 扉を開けようとしているが、どうも開かないらしい。 何か深刻そうな様子なので、近くにいた生徒が「何かあったんですか?」…

ワイパー

名古屋に出張したHさんが無事仕事を終えて、駅に向かうためにタクシーに乗った。 運転手は四十代くらいの気さくな人物で、乗って早々に世間話が始まった。 Hさんは日頃からあちこち出張が多く、行く先々で変わった話などを聞くのが好きだった。 この時もHさ…

ゆで卵

三重の海での話。 高校生三人で入江に釣りに行った。 しばし雑談などしながら並んで糸を垂らしていたが、なぜか一向に魚が食いついてこない。 いつ行ってもそれなりに釣果があるポイントだったので、日が悪いのかと思いながらももう少し粘ってみることにした…

金属音

岩手の海での話。 学校帰りに友達と海辺の道を歩いていると、海の方から突然大きな音が鳴り響いてきた。 金属が擦り合わさるような、あるいは機械がきしむような、何とも嫌な音が、ひどく大きく聞こえたという。 しかし海は穏やかな様子で、見える範囲では一…

窓の女

Mさんが高校三年生の時のことだという。 その日は朝から弱い雨が降っていたが、午前の授業を受けている間に徐々に勢いが強くなってきた。 四時限目には土砂降りの雨が横殴りの風に煽られて窓に音を立てて当たり、一時は先生の声も聞き取りにくいくらいだった…