口ずさむメロディーが教えてくれるとか何とか

中学生の時に、あるクラスメートが言ったのさ。
「ゲームの音楽のCDとか買うのってダサいっつーか」
その発言自体は単なる中二病的な「ゲームとか卒業してポップスとか聴いちゃう俺マジ大人」っていう文脈から出てきたものだったので、当時も(背伸びしやがってこやつめハハハ)という感想を持ったのですが、それを最近ふと思い出して改めて彼に異議を唱えたい。
私はゲームのサントラ買っておいて良かったよ、と。
というのも、ついこの間気まぐれに『FF7』のサントラを引っ張り出して久しぶりに聞いてみたのです。
すると蘇るわ蘇るわ、ゲームをやっていた当時の記憶。記憶というか情緒というか。当時感じていた空気というか。
たとえば『FF7』をやっていた当時、祖母が亡くなって、葬式の準備で家の中が何かとバタバタしていたこととか。祖母の死を今ひとつ現実的に掴めていなかった自分の感覚とか。
そんなものが不意にフラッシュバックして、大層感慨深いものがありました。
経験的に言って、過去の記憶というものはふとしたきっかけで意識に上ってくる。そのきっかけというのは誰かの言葉だったり、映像だったりするのだけれど、こと音楽というのはきっかけとして特に強いアクセス力を持つように思います。なぜかといえば音楽はその性格上、記憶の中において情緒や情動といった、言語外のもの、曖昧な形のものに結びつきやすいからで、従って過去の記憶とセットになった音楽を聞き返すと、その記憶の時間において感じていた情動や情緒も一緒に引っ張り出してきてくれやすい。
また、ゲームのBGMはゲーム中ひっきりなしに鳴っているため、その時間の記憶と結びつきやすいのではないでしょうか。その記憶の付箋として機能しやすいというか。
あとは今回久しぶりに聞いたサントラが記憶を掘り起こしたように、普段聞いていなかった音楽の方が、より強くそれを聞いていた当時の記憶と結びつきやすいように思います。どこかの記憶と結びついている音楽も、その後繰り返し聞いているうちに別の記憶とも結びつきだして各記憶との結びつき自体は薄くなりがちになる。


まあ私が今回思い出すきっかけになったのが偶々ゲームのサントラだっただけで、別にゲーム音楽に限った話ではなく、例えば「学生時代よく行った喫茶店にかかっていたジャズを街角でふと聴いて、当時の記憶が蘇る」とか「隣のお姉ちゃんがよく弾いていたピアノの曲がふとラジオから流れてきて、ふと子供の頃を思い出した」とかいうのと同じ話なんですが。ハルキ村上『ノルウェイの森』の冒頭で主人公が「ノルウェイの森」聞いて涙ぐむアレ。


でもやったことも持っていたこともないFF8のサントラまで買ってあったのはどういう了見だったのだろうか当時の私は。それなりにいい曲入ってるけど、やってないからあまり思い入れがない。なんで買ったんだっけ。
なお、FF7が特別好きというわけではないです。メガテン派です。