麦藁帽子

ある中学校で修学旅行の写真が出来上がったので、プリントして模造紙に貼ったものが廊下に張り出された。
写真には一枚ずつ番号が振ってあるので、生徒達が欲しいものを焼き増し注文できるようになっている。
早速、休み時間には廊下に人だかりができた。
その日の昼休み。
写真の前で、ある生徒がなにやら難しい顔をしている。
通りかかった先生が声をかけると、生徒は写真を指差して言った。
「この子、何枚もの写真に写ってるんですけど、何なんですかね?」
指差した写真にはピースサインをしながら笑っている数人の女子生徒が写っている。
「この端っこです。ここ」
よく見てみると、その写真の端に子供がひとり、写っている。
麦藁帽子を被り、半ズボンをはいた男の子だ。
「こっちの写真にもいますよ、ほら」
別の一枚の端にも確かに同じ風体の子供が写っている。
しかし、こちらは先程の写真とは違う場所で撮られたものだった。
通行人が写りこむのは不思議でもなんでもないが、別の場所で同じ人物が写ってしまうのは不自然である。
他にも麦藁帽子の男の子が写った写真はあって、全部で十五枚だった。
全部違う場所である。
「先生、これ幽霊?」
生徒がそう聞いてきたが、先生にも答えようがなかった。