2017-01-01から1年間の記事一覧

いたたたた

五年ほど前、真冬のよく晴れた夕方だったという。 高校生のEさんはいつものように友人二人と一緒に土手の上の道を帰宅途中だった。 三人とも自転車に乗っていたが、先頭を走っていた友人が急に停まったかと思うと、自転車を横倒しにして地面にうずくまってし…

疎外感

Kさんが新しいカメラを買った。 前から欲しかったデジタル一眼レフである。家族旅行に早速持っていった。 新しい機種ということもあって性能は素晴らしく、Kさんは大満足で写真を撮り続け、旅行中はカメラをほとんど手放さなかった。 帰宅してから写真のデー…

青いチェック

Mさんが小学生のときの話。 授業中に少し大きめの地震が起きた。日頃から「地震の時には机の下に潜るように」と教えられていたので、教室の児童たちは一斉に机の下に潜った。 Mさんも同様に机の下に入ろうと椅子を後ろに下げたが、そこで困った事態になった…

演歌

Wさんが彼女と外食したその帰りのこと。隣町の高台の公園が夜景で評判だと噂に聞いたので、ドライブがてら行ってみようということになった。 話で聞いた通り高台からの街明かりは見事で、他にもちらほらそれを見に来たらしき車が停まっている。Wさんたちも車…

内線

茨城県のある中学校でのこと。 夜七時過ぎのこと、職員室に二人の先生が残って仕事をしていた。仮にA先生とB先生としておくが、彼らはどうしても翌日までに終わらせなければならない仕事があり、他の先生たちが帰った後もそうして残って作業していた。 そこ…

買い物

大学生のFさんが休日の朝に洗濯をして、洗濯機が止まるまでの間にちょっとお菓子でも買ってこようとコンビニに向かった。 午前八時過ぎのことだ。 アパートから徒歩十分ほどのところにあるコンビニで少し雑誌を立ち読みして、それからいくつかお菓子と飲み物…

鉄工所の穴

Oさんが毎日通る通勤路の途中に一軒の古びた工場がある。 機械部品の加工を手がけている鉄工所らしいのだが、道がちょうどそこでゆるいカーブになっているせいで、Oさんはそこを通る時は何となくこの工場に視線が行く。 ある朝もいつものように車でこの工場…

にわか雨

九月上旬のことだったという。 土曜日の午後、高校の水泳部が練習していると急に空が暗くなり、すぐに激しい雨が降り始めた。 にわか雨なら少し経てば収まるだろう、と判断した部員たちは部室で少し様子を見ていたが、案の定二十分ほどで雨脚がかなり弱くな…

頭痛の種

Tさんは日中、仕事をしている最中にだんだん頭が痛みだし、暗くなる頃には痛みが更に酷くなって家に帰るのがやっとだった。 救急外来に連れて行こうかと奥さんは心配したが、Tさんは薬を飲んで寝ていれば治るだろうとすぐ布団に入った。 しかし痛みのせいで…

『けものフレンズ』における擬人化によって動物が持たされたヒトの性質とフレンズという存在についてつらつらと考えているうちにいつの間にか3月が終わり4月も一週間が過ぎておりました。 あとツチノコがフレンズとしてあり得るならばモケーレ・ムベンベと…

牛沼

Eさんの育った町には牛沼と呼ばれる沼がある。 幅三十メートル程度の小さな沼だが、一面が葦など背の高い植物で覆われていて水面が見渡せず、沼というよりは湿地のようなものらしい。 なぜそこが牛沼と呼ばれているかというと、牛の鳴き声が時折そこから聞こ…

プリントアウト

Sさんが単身赴任のために自宅を離れてアパートの一室に引越した。 それから一週間ほど経った頃のこと。 仕事を終えてまっすぐアパートに帰ってきたSさんは、部屋に入る前に郵便受けを確認した。 すると紙が一枚丸まって入っている。取り出してみるとA4サイズ…

祖母の臨終

Hさんの父方の祖母は体調を崩して二年ほど入院していたが、ある夏の夕方、危篤の報せが入って皆で病院へ駆けつけた。 病室にはHさんと両親の他に父の兄弟も集まって、祖母に向かって沈痛な面持ちで話しかけたりじっと見つめたりしていた。声をかけても祖母か…

生臭煙

大学生のKさんが友達四人でレンタカーを使ってドライブに行った。 何ヶ所か観光スポットを回り、一日はしゃぎ続けて帰り道の車内でも女子トークが止まらなかった。 海沿いの広い道を進んでいると、脇道から一台の大型トラックが出てきた。 トラックはKさんの…

ショッピングカート

Nさんが高校二年生の秋、修学旅行に行くためにいつもより早い時刻に家を出た。 旅行先はそれまで行ったことのない北海道なのでNさんは前々からとても楽しみにしており、駅に向かう自転車のペダルも軽かった。 その途中の交差点で信号待ちをしていた時のこと…

駅の階段

高校生のTさんはバレー部の練習中に右足を痛め、病院で靭帯損傷と診断された。その後二ヶ月ほど足首にギプスを着けっぱなしの不便な生活が続いた。 ギプスを付けたままでは部活動どころか階段の昇り降りにも支障をきたす有様で、学校内や通学中の駅の階段な…

広辞苑

Nさんが就職して一人暮らしを始めてから半年くらい経った頃の話。 アパートの自室で寝ていると、なにやら嫌な夢を見て苦しさのあまり目を覚ました。 すると夢から覚めたはずなのにまだ体が重い。――と、いうより体の上になにか重い物が乗っていて苦しい。 な…

タンポポ畑

都内に住む主婦のYさんの話。 暖かい春の日の夕方、近所の公園に遊びに行った六歳の娘を迎えに家を出た。 まだ空は明るかったが、色々物騒でもあるし、薄暗くなる前に娘を連れ戻しておこうと考えたのである。 公園までは歩いて五分ほどで着く。まっすぐ行っ…

インフルエンザに罹って寝込んでおりました。

着物の女

茨城の中学校でのことだという。 ある朝、一年生のあるクラスでホームルームの時刻になっても担任の先生が来なかった。 教室の生徒たちは好き勝手に騒いでいたが、そこに入ってきたのは先生ではなく、着物姿の女だった。 誰? 見知らぬ女が突然入ってきたの…

耳鳴り

Tさんは毎朝のジョギングが日課で、近くの堤防の上が通行人も少なく、車も気にしなくて済むためお気に入りのルートだった。 しかしこの堤防を走っていると途中で決まって耳鳴りがすることに気が付いたという。 ほんの数秒間だけなのだが、同じあたりを通り過…

スカート

大学生のNさんがショッピングモールへ行ったときのこと。 上りのエスカレーターに乗ると、すぐ前に女子高校生らしき制服の二人組がいた。 しかしそのスカートが妙に短く、後にいるNさんの目の高さに裾があって非常に目の毒に感じる。 覗き込んでいると思われ…

高層ビル

祖父の一周忌のためにEさんが岡山県にある母の実家に泊まった夜のこと。 お風呂上がりに歯を磨きながら庭に面した窓の外を何気なく見たEさんは、そこから望む山のあたりに沢山明かりが点いているのを見つけた。 山と言っても夜中のことで黒いシルエットしか…