買い物

大学生のFさんが休日の朝に洗濯をして、洗濯機が止まるまでの間にちょっとお菓子でも買ってこようとコンビニに向かった。
午前八時過ぎのことだ。
アパートから徒歩十分ほどのところにあるコンビニで少し雑誌を立ち読みして、それからいくつかお菓子と飲み物と昼食用のパンを買って店を出た。
アパートに帰ってみるとまだ洗濯機は止まっていなかった。何気なく時計を見ると八時十分過ぎ。
片道十分の店に行って帰ってきたのだからそんな時刻のはずがない。
時計の電池がなくなってきたのかな、コンビニで電池も買ってくればよかった、などとテレビを点けて時刻を確認してみたが、画面の左上に表示されている時刻も八時十三分。どの局も同じ。
そんなバカな、と財布から先程コンビニで貰ったレシートを取り出したところ、記載されている時刻は八時九分。コンビニの時刻が間違っていないならば、会計を終えてから二、三分で家に帰ってきたことになる。しかしFさんは特に急ぎもせず歩いて帰ってきたわけで、体感としてはいつも通り十分ほどかかっていたはずだった。
一体何が正しいのか訳がわからなくなったFさんは、とりあえず落ち着こうと買ってきたお菓子を食べることにした。
そしてコンビニのビニール袋を覗き込んだFさんは、更に仰天することになった。
買ってきたお菓子とパンが、全てむき出しになってビニール袋の中にごちゃ混ぜになっているのだ。
レジで店員がビニール袋に入れてくれてからアパートに戻ってくるまで、Fさんは一度も買ってきたものに手を触れていない。しかしポテトチップやらチョコレート菓子やら、買ってきたお菓子はどれも包装の外へと飛び出して混ざってしまっている。
えっ嘘、一体いつの間に、とビニール袋の中を探ってお菓子やパンの袋を取り出したFさんは、それをよく確認するうちにますます怪訝な顔になった。お菓子の袋も箱も、どれ一つとして口が開いていないのだ。隅から隅まで眺めてみてもどこにも穴がない。
ポテトチップの袋などは、今でも中身が入っているかのように膨らんでいる。しかし振ってみてもカサッとも音がしない。すっかり空になっている。
空いていないならば中身が出てしまうはずがない。しかし現に、お菓子はコンビニの袋の中にすっかり出てしまってごちゃ混ぜになってしまっている。一体何がどうなってこんなことになっているのか、全く説明も想像もできなかった。
わけがわかんねえ……。
Fさんは混ざってしまったお菓子をより分けて溜息混じりに食べたという。