生臭煙

大学生のKさんが友達四人でレンタカーを使ってドライブに行った。
何ヶ所か観光スポットを回り、一日はしゃぎ続けて帰り道の車内でも女子トークが止まらなかった。
海沿いの広い道を進んでいると、脇道から一台の大型トラックが出てきた。
トラックはKさんの車の前に入り、後ろから真っ白な煙を吐きながらスピードを上げた。
するとその煙がなぜか散らばることなく、大きなかたまりになって反対車線の方へ流れていく。
それはKさんたちの目の前でバンザイをした人の形になり、その形を保ったまま滑るように反対車線を横切り、海の方へと遠ざかっていった。


……今の見た?
見た! 何アレ!?


車内は騒然となったが、そのまま車を走らせているうちに何だか他のことが気になり始めた。


やだ、何か……くさくない?


いつの間にか車内に生臭いような、焼魚のような、つまり生焼けの魚とでも言うべき嫌な臭いが充満している。
魚など食べても買ってもいないし、臭いが付きそうな場所にも行っていない。そもそも、つい今しがたまではそんな臭いなどしていなかったのに。
たまらず窓を全開にして外の空気を入れる。外から入った風はかすかに潮の香りがするくらいで、生臭くもなんともないからやはり嫌な臭いは車内から発しているらしい。
しばらく走ってから窓を閉めたがまだ生臭いのですぐまた開けた。
帰ってから車の中を確かめてみても臭いのもとになりそうなものは見当たらない。
レンタカーはそのまますぐ返却してしまったが、それでもどことなく辺りが生臭いような気がしてならない。
Kさんを含め四人全員が、翌日の夕方くらいまでずっと嫌な臭いを感じ続けたという。