黄色と白

Rさんが以前住んでいた街には銀杏の並木道があり、Rさんは毎日そこを通って仕事に行っていた。
寒くなってくるとそこは落葉で一面が黄色に染まる。
付近の住民や清掃業者が時々落葉を片付けているようで、道路脇に落葉の山ができていることもある。それでも後から後から落ちてくるのですぐ道路は葉っぱで埋め尽くされる。Rさんはその上をサクサクと音を立てて歩いていくのがその季節の密かな楽しみだった。
ある日もRさんが落葉の上を歩いていると、前方に白っぽいものが見えた。落葉の上を滑るようにこちらに向けて移動してくる。
白くて角ばっている。魚屋などに置いてあるような発泡スチロールの箱かと思ったが、どうも表面が滑らかすぎて、蓋があるようにも見えない。
箱というよりはむしろ大きな豆腐のようだ。
あれは何だろう。
驚くことに、それがゆっくりと路上を滑ってくるのに合わせて、向こう側の落葉が一斉に引きずられている。豆腐が通った跡だけでなく、その周囲の落葉もまとめて引っ張られている。見えないブルドーザーが落葉をまとめて押しているようでもあった。
何が起きているんだ? まさか掃除ロボットか?
とりあえずスマホで撮影してみようと慌ててポケットから取り出して、視線を戻したときにはもう豆腐のようなものは影も形もない。
ただ、Rさんの数メートル先で落葉のあるところとないところの境目がきれいにできているだけだった。
呆然としながらそこを通り過ぎたRさんだったが、後になってからふと思いついたことがあった。
もしかすると、今まで誰かが落葉を片付けていたと思っていたが、その中の何度かはあの白いものがやっていたのではなかったか。運が良ければまた見られるかもしれない。
しかし、転勤で引越すまでの間にふたたび同じものを見ることはなかった。もちろん掃除ロボットがその路上で使われていたという話も聞かなかった。