2025-01-01から1年間の記事一覧
友人が転職を機に引越すというのでFさんも手伝いに行った。家具は引越し業者に運んでもらったので、段ボール箱三つを車に積んで新居のマンションに向かった。荷解きを手伝い、謝礼に一升瓶二本もらってその日は帰った。十日ほどしてまたその友人の新居を訪ね…
Cさんが大学進学のために引越したアパートの部屋には、壁に姿見が掛けられていた。前の住人が置いていったものだという。鏡は洗面所のもので十分だと思っていたCさんだったが、せっかくなので便利に使わせてもらうことにした。しばらくして大学で同期の女の…
Hさんが電車に乗っていたときのこと。座席に座っているHさんの目の前に、こちらに背を向けて立っている乗客がいる。チェックのシャツを着た男性だ。ふと視線を上げたところで、視界の中でそのチェック柄のシャツだけが変にぼやけたように見えて二度見した。…
Eさんが歯医者で親不知を抜いてもらったときのこと。歯を抜くときには目隠しに布をかけられた。その視界が遮られる間際、視界の端に見慣れないものが入った。甲冑を身につけた、大きな五月人形のようなもの。それが診察室の隅にちらりと見えたような気がする…
勝浦で民宿を営業しているGさんの話。Gさんの民宿から百メートルほど歩いたところに古い自動販売機が立っている。もう長い間放置されており、ところどころ塗装が剥がれて錆が浮いている。当然電源も入っていない。ところがどういうわけか、民宿に泊まったお…
八月の末頃の話だという。Rさん夫婦がしばらくぶりに訪ねてきた妹を連れて外に夕食をとりに行った。その帰り、車を運転しながらRさんはふと道の脇に変わったものを見つけた。道端のベンチにクリスマスツリーが置かれている。八月にクリスマスツリーというの…
サーフィンが趣味のWさんは主に鉾田の海に乗りに行く。その日も午後から海に行って一人でしばらく波に乗っていたところ、急に頬に感じる風が冷たくなった。寒冷前線が通ったな、と思った。そうすると短時間で天気が変わる。風が強くなり、にわか雨が降る。風…
Uさんには幼い頃、姉と一緒にする遊びがあった。Nさんが考えたキャラクターを使って姉がストーリーを作り、語って聞かせるというものだった。絵本に出てきたキャラクターや近所の人をモデルにしてUさんが人物設定を話すと、姉がそのキャラクターが出てくる物…
Nさんの幼い娘が言葉を覚えてさかんに話すようになった頃のこと。テレビで大相撲の中継を見て気に入ったらしく、力士が画面に映るたびに指さしながらおすもうしゃん! と連呼して喜んでいる。あるとき娘を連れて散歩に出かけた。近所を流れる利根川にかかる…
高校生のUさんには二つ年上の姉がいて、姉が大学進学で家を出るまでは同じ部屋で寝ていた。まだ姉が家にいた頃のこと、Uさんが夜中に寝苦しさのあまり目を覚ますと、なぜか身動きが取れない。布団が妙に重くて身体に絡みついてくるような感覚だった。首だけ…
Bさんが職場の同僚の家で飲み会をやった。集まったのは独身の同僚三人で、翌日は休日だったので深夜まで飲み明かしてそのまま雑魚寝した。ふとBさんが目を覚ますと部屋はまだ暗く、壁の時計を見ると午前四時前だった。もう一眠りするかと思ったが、何やら部…
Nさんが十五年飼っていた愛犬が衰弱してしまった。獣医師に相談すると高齢のせいだという。力をつけてもらおうと肉を食べさせたりもしたがその甲斐なく、日を追うごとに坂を転がり落ちるがごとく弱っていく。ついに歩き回る程度の体力もなくなって、部屋の隅…
Cさんが大学の先輩から久々に誘われて、喫茶店で会うことになった。在学中はよく一緒に飲みや遊びに行ったものだったが、卒業以来もう何年も直接顔を合わせることがなかった人だ。店で落ち合うと昔話に花が咲いた。しばらくぶりに会ってみると、学生時代より…
昼過ぎにKさんが銀行に行った。入口そばのATMで現金を下ろそうとしたところで、視界の端に見知った姿があるような気がしてちらと目を向けた。長椅子に並んで窓口の順番待ちをしている人々の中に、友人の顔があった。ところがその友人は昨年心臓発作で亡くな…
Iさんの職場のスーパーには何かがいるという。従業員の多くが認識しているようだが、正体は一向にわからない。終業後、灯りを消して帰ろうとすると、暗い中で毛むくじゃらの何かに一瞬手が触れることがある。ただそれだけ。不審に思って灯りを点けてもそれら…
市役所職員のRさんの話。休日に市内にある渓流で釣りをしていたときのこと、午前中に三匹ほど釣り上げて上機嫌なRさんはそろそろ昼食にしようかと釣り竿を置いた。そして釣った魚を入れておいたバケツに目を向けたところで仰天した。赤ん坊が入ってる……!?…
Rさんが大学二年生のとき、高校時代のバレー部の先輩が事故で亡くなった。大阪の大学に通っていたRさんは郷里の茨城に駆けつけ、葬儀に参列した。葬儀場に集まった人々の中にはかつてのバレー部の仲間たちの姿もあったものの、流石に旧交を温めるという場で…
Tさんはロクという名の犬を飼っている。一日二回、朝と夜にロクを散歩につれていくのが日課なのだが、散歩中のロクには困った癖がある。暗い中で走ってくる自動車を見ると、吠えながら勢いよく走り出そうとするのである。どれだけ叱っても、一向にやめない。…
中学生のWさんが一人で埼玉の自宅にいたときのこと。玄関を叩く音と、ごめんくださいという声がした。はーいと返事をしながら玄関まで出てみると、ドアの向こうから男の声で「俺だよ、Mだよ」と言う。MというのはWさんの母の弟で、神奈川に住んでいる。半年…
二十年以上前、Fさんが中学生のときのことだという。美術の授業で水彩画を描く課題が出た。最近の印象的な出来事、というテーマで作品を描いて提出せよということだった。Fさんは少し考えてから、数週間前に同じクラスで起きた事件を題材に選んだ。事件とい…
カエルの鳴き声が聞こえる季節になると毎年思い出すんですよ、とUさんは語った。高校生の頃茨城に住んでいたUさんは当時自転車で遠出するのが趣味だった。高校入学のお祝いにロードバイクを買ってもらったので、放課後や休日には時間の許す限りどこまでも出…
Rさんが五月の連休に船橋で潮干狩りをしたときのこと。混雑してはいたものの、小学生の息子と娘は大喜びではしゃいでいた。二人とも海に来るのは初めてだったからだ。連れてきて良かったとRさん夫婦は頷き合い、Rさんは娘と、妻は息子と一緒に貝を掘り始めた…
静岡に住むKさんが東京に出張した。ビジネスホテルで一泊したが、ふと目を覚まして時計を見るとまだ午前四時。空調のせいか、昨晩のビールのせいか、喉がカラカラに乾いている。水でも飲んで寝直そうと思ったのだが、普段と環境が違うせいか、もうそれほど眠…
消防団に所属しているSさんの話。コロナ禍より二年ほど前のこと、秋に直撃した台風の大雨で川がかなり増水した。そういうときは消防団が堤防や水門、橋などに異常がないか見て回る。Sさんも年配の団員と二人組で、自前の軽トラックで警戒ポイントを見て回っ…
Rさんが小学生のときの話だという。学校から帰ってきたRさんが玄関から入った途端、あっ、焼き魚だ、と思った。玄関から見えたわけではなく、魚の焦げたようなにおいと油の焼ける音がしたのだ。しかし晩ごはんの支度をするにはまだ早い。おやつに焼き魚とい…
Fさんという女性から聞いた話。一月のある夜、Fさんの弟の妻である義妹が訪ねてきた。「お義父さんお義母さんの位牌を預かっていただけませんか」弟夫婦はFさんの実家で二人暮らしだ。Fさんの両親の位牌が納められた仏壇もそちらにある。しかしその位牌を預…
長野の大学に入ったGさんの話。大学の近くのアパートに下宿したが、すぐ近くの高台に公園があり、散歩でよく行った。その公園から尾根伝いに遊歩道になっており、もう少し上にある展望台まで行けるようになっていて、そちらにも気が向けば足を伸ばした。ある…
Rさんが彼女とデートしてホテルで一泊し、どこかで朝食を食べてから帰ろうかと朝の街を二人並んで歩いていたときのこと。ぽつぽつと言葉を交わしながら歩いているうちに川にかかる橋に差し掛かった。見下ろす川面に朝の光が反射してキラキラ輝いている。昨夜…
Fさんが高校生だったある日、同じクラスの友人がこんなことを言い出した。最近さあ、橋の下に女の子が集まってるんだよね。あんなところで何してるんかな。彼の話では、通学路の途中にある橋の下に、小学生くらいの女の子が数人集まってなにかしているところ…
二十年ほど前、Sさんが小学五年生のときの話。Sさんの通う小学校では毎週月曜日が集団下校の日と決められていた。その日は同じ地区に住んでいる児童が下校班を作って一緒に帰るのである。ある月曜日、Sさんは同じ地区に住む同級生二人と些細なことで口喧嘩し…