青いチェック

Mさんが小学生のときの話。
授業中に少し大きめの地震が起きた。日頃から「地震の時には机の下に潜るように」と教えられていたので、教室の児童たちは一斉に机の下に潜った。
Mさんも同様に机の下に入ろうと椅子を後ろに下げたが、そこで困った事態になった。
自分の机の下に、別の子が先に潜り込んでいて入れないのだ。机の下一杯に別の子の背中が詰まっていて、Mさんが入る余地がない。
――誰だこれ?
周りを見ても空いている机はない。今この机に入っている子は一体どこから、いつの間に来たのだろうか。誰かが先に自分の机に潜ったなら気付かない方がおかしいのに、全くわからなかった。
こちらに背を向けているので顔は見えないが、青いチェックのシャツを着ている。……こんな服、今日誰か着てたっけ?
どうしていいかわからずMさんが呆然としている間に、地震はすぐ止んだ。安心した児童たちが机の下から続々と出てくる。
しかしMさんの机の下の子はピクリともしない。Mさんが背中や脇腹を突付いても、全く反応がない。
仕方なく先生に報告しようと立ち上がったMさんがもう一度机の下に視線を落とすと、もうそこには誰の姿もなかった。
見回しても、教室のどこにも青いチェックのシャツを着た子はいなかったという。