八十八

あとがきにかえて / 記憶の断片が行動を左右することは意外によくある

最後の写真をblogに掲載してから、bachihebi(仮)は長い溜息をついた。 ――やっと終わった。 達成感と言える程の感動はない。 写真を一枚撮って掲載するだけの単純な作業である。毎日続けたとは言え、たったの四ヶ月足らず。 そもそも、blogの内容は自分のモ…

全ての稲を刈り尽くせ百十日目

とうとうこの日がやって参りました。 収穫ですよ奥さん。奥さん米屋です。 実に興味深い。検索を始めよう。 「人妻」「米屋」「団地」「昼下がり」 ……まだキーワードが足りないようだ(あごに手を添えながら)。 何か他に手がかりはないかい翔太郎。 中国に…

夏が来れば思い出すかもしれない百九日目

小学生の頃は毎年夏休みになると祖父の家に遊びに行った。 祖父が住んでいたのは海辺の町で、どこにいても潮の匂いがした。お蔭で家の周りにある鉄製品にはみんな赤錆が浮いている有様で、だから記憶の中の祖父の家はどこか赤茶けた印象がある。 祖父の家の…

煩悩の百八日目

日に日に稲の倒れ具合が増してゆくような。 しかしコンバインは優秀なのでちょっとやそっとの倒れた稲など物ともせぬ。 流石は超電磁。 豆知識自慢の男、豆しばごときに豆知識を語られるなんてプライドが許さないと憤慨、密かに溜め込んだ豆知識を毎日一つず…

土星バースト出ない百七日目

メタルマックス3中なので道ゆく車両が全て戦車として立ち上がってくる。 普通の乗用車は装甲薄くてあんまり役に立ちそうにないが。 のりものあつまれ いろんな戦車(クルマ) どんどんでてこい はたらく戦車(クルマ) 「はたらくくるま」はメタルマックス…

千の風になるためには風葬に限る百六日目

盆に帰省した私を、兄が車で迎えに来た。その隣に兄嫁の姿を見つけて、思わず身を硬くする。 正直、兄嫁は苦手だった。 彼女は私の高校時代の二年上の先輩で、同じ部活に所属していた。華やかな容貌ではないけれど、柔らかい雰囲気の女性だった。 入部当初か…

盆が来たとて百五日目

バッタが増えてきた。 それを貪る近所の猫。

ひぼたん出ない百四日目

『大魔神カノン』を三話ほどまとめて視聴。 この作品は主人公が地味なお姉ちゃんだから良い。 カノンさんのどこかその辺歩いてそうな雰囲気が実に良い。 そんな田舎娘のカノンさんが都会に出た途端チャラ男に誑かされて精神に傷を負ってしまう所などは大変悲…

流れ流れて百三日目

近辺ではもうどこの田んぼも随分と黄色くなってきた。 企画の終点が見えて参りました。 稲刈りが終わったら電車に飛び乗って行き先も確認せずに行ける所まで行って、聞き覚えのない駅で戯れに降りて寂れた駅前の薄暗い蕎麦屋で掛蕎麦など啜りつつぼんやりと…

ライダーの百二日目

窓際から妙な音が響いてきたので見てみると網戸に止まったクビキリギスが啼いていた。 近くで啼かれると結構うるさい。 仮面ライダーみたいな顔しやがって……。 そんなわけで仮面ライダーWの劇場版を観に行きました。 誰もが一度は考えるであろう「なあボブ…

雨が少ない百一日目

台風の影響で一日風が強かった。 直撃しなかったので稲が倒れるほどの強さではなかったけど。 近所の農家は稲刈りに向けてアップを始めたようで、脱穀機とかコンバインとかの整備をされているお宅がいくつか見受けられた。 脱穀が一斉に始まると作業過程で出…

一白日目

稲の写真を撮り始めてからもう百日目か……。 はええもんだぜ。 (男塾だとこのあと三面拳が復活したり元敵キャラが編入してくる) キアゲハも順調に生育。 実にいい模様をしている。 サイケな奴ぜ。 オニヤンマも飛んでいたが撮影は無理だった。

あとで読む九十九日目

覚書。 葬というものを考える。 「葬う」という行為は全世界で当然のこととして扱われている。これをしない民族は地球上に存在していないと言い切ってしまってもいいだろう。とすればこれは人類の習性と言えるかもしれない。 歴史、宗教、風土など色々な要素…

飛ばすマシンのシルバーが九十八日目

今日の写真は黄色すぎる。曇りのせいか。 本当は天気のせいではなく何か他の厭なオカルティック原因があって、これから毎日少しずつ写真が黄色くなっていき終いには黄色一色になって何もわからなくなってしまったらそれはそれで。最後の一枚は稲を撮った筈な…

つくつく九十七日目

ツクツクボウシが啼き始めたのでもう夏も終わり。 まだ暑いけど。 奴らの声を聞いたときのこの寂寥感はなんだろう。 夏休みの宿題の追い込みしながら聞いた記憶のせいか。

伊良子esp九十六日目

さっきからツマグロヨコバイが飛び回っている。 窓は開けていないのにどこから部屋に入ってくるのか。

ドラム缶おす九十五日目

稲が一気に黄色くなった。 のではなく、ホワイトバランスを変えて撮ったらこんな色に。 しかしこっちの方が肉眼で見た色に近く感じる。 今までが白すぎた。 キアゲハの幼虫共がアシタバを食い荒らした結果、葉が殆ど全滅。 消費量に葉の生育が全く追いついて…

肉弾戦って肉を弾丸にして戦うのかと思って九十四日目

再来週あたりには稲刈りが始まるかと。 暑い中にもじわじわ秋の気配。 今年もウマオイが啼き始めました。 あいつらは肉食性が旺盛らしいので、あの啼き声も小昆虫にとっては死神の呼び声。 美しい声で啼く肉食生物というのはどこか詩的に思える。

暑くても服は着たほうが良い九十三日目

暑い日が続き、全裸で過ごす者も増える季節。 しかし勘違いしてはいけない。 暑いからといって忽然衣服を脱ぎ捨てるような者は真の全裸主義者(zenrist)ではない。 全裸主義者は気温湿度その他いかなる条件も気にすることなく服を脱ぐ。 暑い日も脱ぐ。しか…

日常のなぞ九十二日目

駅前でずっとじゃんけんしてる小学生の一団がいたんだけど何だったのか。 なぜ淡々とじゃんけんばかり繰り返していたのか。 暑いのになぜ外でわざわざ。

フォーミュラ九十一日目

夏の湿気は強い。風が吹いても全然涼しくない。桶屋は儲かる。 湿気と言えば水蒸気ですが、蒸気といえばスチームパンクです。 スチームパンク都市は年がら年中蒸気を吹いているので湿気が酷いはず。 汗は乾かないし窓は曇るしパンはたちどころにカビる。 乾…

もういくつ寝ると九十日目

白鷺が車に轢かれて無残な事になっていた。 遠目には白いビニール袋か何かに思えた。 あんな大きい鳥、轢いた方も驚いただろう。 電線の上では鴉が見下ろしていた。

MM3届いた八十九日目

古くなった道具や長く生きた生物に神霊が宿ることを付喪神という。 だから例の百十余年生きていることになっていた人物も、もはや人を超越して神と言うべき存在になっていた事は疑いようもない。 篭っていた部屋がずっと閉ざされていたのも、神の姿は濫りに…

夏も近づくどころではない八十八日目

Tさんが大学を卒業して、四年間住んだアパートを引き払うことになった。 引越しの作業をして、一番大物であるベッドを退かした時のこと。 踏み出した足の裏に何かが刺さった感覚がして、痛みのあまり飛び上がってしまったという。 何か尖った物でも踏んでし…

MM3届かぬ八十七日目

画面に投影したリアルタイムの風景上に情報を付加する技術、拡張現実(AR)。 そこに仮想の恋人を投影させるという試みは二十一世紀初頭から実行に移されてきた。 愛足。愛足足。愛足足足。愛足足足足(以下略)。 その過程において――当然、予測されていたこ…

豆腐店の八十六日目

豆腐をごはんに乗せて適当にほぐしてから削り節と醤油と気分によっては更に胡麻油かオリーブ油かラー油をかけて食す。 刻んだ葱や茗荷があればそれもかける。 手間要らずで旨い。豆腐を考えた人は偉大であるなあと思いながら食す。 豆腐といえば思い出すのが…

ヤンデレは考えてる時が一番楽しい八十五日目

蓮華王院三十三間堂に安置される膨大な数の千手観音像。 その中には必ず自分や家族と同じ顔をした像が存在すると謂われる。 恋人を事故で失った女性がその面影を求めて三十三間堂を参詣するも、突如激昂して像の一つに掴みかかり、取り押さえられる。 女性が…

キア八十四日目ゲハ

昨日よりも更に稲穂が垂れてきた。 昨日は満月と書いたが間違い。 満月は今夜であった。 おわああ、ここの家の私は病気です。 具体的にはものもらいです。 アシタバにキアゲハの卵が幾つも産み付けられていた。 キアゲハは成虫になると何だかナミアゲハとあ…

おわあ、八十三日目

ついさっきまで激しい雷雨だったが今は月が明るい。今夜は満月。 休日を利用してまとまった量を書こうと思っていた文章が全然形にならないので寝る。

とむらいトーマス八十二日目

エアコンをドライ設定で作動したまま、うっかり窓を開けっぱなしに。 部屋の内外をひたすら行ったり来たりする湿気。 ウロボロス湿気。 永劫回帰湿気。 その一見無意味に続けられる循環は、決定的な価値観を失ったまま無為に時間を過ごさざるを得ない現代人…