全ての稲を刈り尽くせ百十日目


とうとうこの日がやって参りました。
収穫ですよ奥さん。奥さん米屋です。
実に興味深い。検索を始めよう。
「人妻」「米屋」「団地」「昼下がり」
……まだキーワードが足りないようだ(あごに手を添えながら)。
何か他に手がかりはないかい翔太郎。



中国においては伝統的に秋になると北方及び西方の異民族が攻めてきます。
なぜかというと収穫の時を迎えた作物を奪いに来るからです。
七人の侍』でも収穫の時を見計らってならず者が襲撃してくるのであり、歴史的には秋こそが最も血塗られた季節と言えるかもしれません。
「足りないものはある所から奪えばいい」というのは至極当たり前の思考であり、牧歌的なイメージとは裏腹に、農村というのは無法の世界において高い自衛能力を要求される世界でもあるわけです。
というわけで秩序が荒廃した後の農村世界を考えてみます。
ひとたび天変地異や政変により秩序が失われてしまえば、そこに生きる人間は何よりもまず「安心」を求めます。住居の安心、飲み水の安心、食料の安心、等々。
都市部は物流が滞ると真っ先に干上がるので、秩序が無くなってからは略奪の段階を経た後に人口が減らざるを得ない。混乱後は農村がhotです。
農村は食料の自給能力が高いので、物流が断絶した後も都市部に比べて餓死の危険性は低くなるでしょう。従って食料を求める人間の農村部への流入も起こり得ます。
人間が増えれば食料が行き渡らなくなる。食料を手に入れられなかった者は不満を爆発させ、暴力は暴力を呼び、憎悪はいとも容易く連鎖します。
農村側と暴徒側に分かれた抗争。
農村側はトラクターに機銃つけたり畦道に有刺鉄線を設置したりする。
ごついジープとかバギーに乗って押し寄せる過激派暴徒たち。
そしてどちらの勢力にも与せずに虎視眈々とTENKAを狙う者なんかが「やっぱ火はいいのう!」。
断続的な戦闘の果てに再び巡り来る実りの季節。
実りは新たな争いを呼び、血は血でのみ贖われます。
抗争で斃れた者は田畑の肥料に。
散っていった仲間たちの魂の安息を祈り、万感を込めて呟く「いただきます」。


かように人の想いが「込め」られているからこそ、この作物は「米」と名付けられたと伝えられております。どっとはらい