2008-01-01から1ヶ月間の記事一覧

八十六/ 釣り禁止

Hさんが通っていた大学の広いキャンパスの端には、何かの実験用に作られたという小さな池があった。一体何の実験で使われるのか、はっきり知っているという学生もいなかったというが、ただ「この池で釣りをしてはいけない」という決まりだけは皆よく知って…

八十五/ 凧揚げ

Eさんが小学生の頃の話。 近所の河原で、友達二人と凧揚げをしていた。しばらくの間楽しく過ごしていたが、ふとEさんは首を傾げた。凧の数がおかしいのだ。Eさんと友達の分、全部で三つの凧しかないはずなのだが、見上げる先には四つ凧が揚がっている。見…

メモ・二次創作の構造

「石を投げれば二次創作に当たる」と誰が言ったか知りませんが、二次創作の氾濫振りには目を見張るものがあります。漫画、小説、イラスト、動画といったように形式も多岐にわたり、作り手の技能においてプロに劣らぬような上質の作品も少なくないばかりか、…

大相撲銀河場所

幕下力士に「阿夢露」という四股名を発見したので友人と「宇宙世紀だ」「シャアはどこだ」「そのうち殺駆とか怒武とかいう四股名も出てくるに違いない」「宇宙世紀には大相撲火星場所とか月場所とかあるんだよ」「力士の呼び出しも、出身・月、フォン・ブラウン市、ザビ…

八十四/ 同乗者

Kさんが以前、通勤にバスを使っていた時のこと。 ある日、どうしても仕事が片付かなかったので帰りが遅くなった。終発一本前のバスにはKさんのほかに二、三人しか乗客がいなかったという。しばらくバスに揺られていると、Kさんが降りるひとつ前の停留所で…

八十三/ 山の温泉宿

Nさんが当時付き合っていた男性と一緒に那須の山中にある温泉宿に行ったときのことという。 宿の周りを散策しているうちに日が暮れてきて、夕食前に一風呂浴びてこようということになった。Nさんが脱衣所に入ると、曇りガラスの引き戸越しに浴場からお湯を…

八十二/ 曇る窓

Kさんは中学生の頃、隣町の学習塾に通うのに路線バスを使っていた。このバスに、一つだけ不思議なことがあった。なぜか、ある所に差し掛かると片側の窓だけ、一斉に結露して曇るのだという。それも季節に関係なく、一年中その現象が見られたらしい。いつも…

八十一/ 二等船室

地名と時期を伏せるという条件で、掲載の許可を頂いた話。 Nさんという男性が旅行中、フェリーに乗った。寝台は二等船室に取った。船酔いが心配だった彼は、日が暮れて早々に寝ることにしたという。幸運にも他の客は疎らで、ゆったり横になることができた。…

カニとイクラ踊るよ

なんとなく北へ。寒かった。 とりあえず行くにあたり『地の果ての獄』『羆嵐』を再読した。私の北海道観は多分にその辺りに拠っています。

八十/ 雑巾がけ

Sさんは、中学生の頃わけあって親戚のお寺に預けられていた。近隣でも大きいほうのお寺で、本堂を半周する長い廊下があった。この廊下が、なにやら陰気な感じがしてどうにも好きになれなかったらしい。 ある晩遅くのこと。Sさんはトイレに行きたくて目を覚…

七十九/ 桜

外を歩いていたEさんは何故かその日に限って、すれ違う人からの視線を感じた。気のせいかとも思ったが、やはり皆自分のことをちらちら不思議そうに、あるいは珍しそうに見ていく。何だろうと思ったEさんは、通りに面したビルのガラス窓に映った自分の姿を…

あと二十。とはいえ、百話行くか九十九話で止めるかまだ決めてません。

劇場版『魍魎の匣』

観料が千円だったので観てきた。原作をふまえて感想。ネタバレありで。

七十八/ 線香花火

学生時代、Oさんは学生寮に住んでいた。アルバイトが忙しかったのでその冬は帰省せずに寮で年を越したのだが、そんなある日の真夜中のこと。 パチパチという音で目が覚めた。ああ花火か、と半分眠りながら思う。一瞬して、花火? と疑問に思った。そこは寮の…

七十七/ 沸き立つもの

清掃業者でアルバイトをしていたOさん。 担当はショッピングモールの開店前の清掃だった。ある時いつものようにモップをかけていると、通路の隅で何かが動いているのが見えた。ネズミかゴキブリかと思ってそっと近寄ってみたところ、それは動物ではなかった…

あけましておめでとうございます。と言いつつ書くのは怪談なんですが。