八十五/ 凧揚げ

Eさんが小学生の頃の話。
近所の河原で、友達二人と凧揚げをしていた。
しばらくの間楽しく過ごしていたが、ふとEさんは首を傾げた。凧の数がおかしいのだ。Eさんと友達の分、全部で三つの凧しかないはずなのだが、見上げる先には四つ凧が揚がっている。見通しのいい河原に、Eさんたち以外凧を揚げている人影はない。
見間違いかとも思ったが、何度数えても凧は一つ多い。四つ目の凧は三人の凧の動きに付かず離れず、ふらふら浮いている。凧ならば地上に糸が繋がっているはずだが、高く揚がっているせいでよく見えない。三人揃って首をひねった。
そこで一旦三人が離れて凧同士も離してみればどれが余計な凧なのかわかるのではないか、ということになった。せーの、で一斉に三人別々の方向に走り出す。
さあどうだ、と見上げた空には、凧は三つしかなかった。