Wさんは結婚を期に、千葉に家を買った。
新居に引越して間もない頃、家の近くを歩いていると住宅地の中に空き地を見つけた。
周囲の家一軒分と同じくらいの広さだが、家の間にあってそこだけが空白になっている。手入れはされているようで、きれいに草を刈ってあった。
そこに小学生くらいの女の子が四人、向かい合って地べたに座りながらコップを持ったり何かこねたりしている。
このあたりの子かな、最近の子もおままごとするんだな、と微笑ましく思いながら通り過ぎようとしたが、なんとなく引っかかるものがあって目を凝らした。
違和感があったのは女の子たちの身なりだ。服が今風でなくどことなく古臭い。髪型もみんなおかっぱだ。
どうもその空き地だけが昭和の風景といった風情に見える。
本当にあの子たちは近所の子なんだろうか。
そこへ車が走ってきた。歩道のない道なので、Wさんは少し脇へ避けた。
それからまた空き地へ視線を戻すと、女の子たちの姿がどこにもない。それどころか空き地の景色が様変わりしており、きれいに刈られていたはずの草が至る所ぼうぼうに伸びている。
たった今目にしていた光景はどこへ行った。
後で町内会長に聞いた話では、その空き地は昔は溜め池があったところだという。宅地造成で埋め立てたが、そこに家を建ててもどうにも湿気が酷く、人が居つかないので今では空き地になっているということだった。