2026-01-01から1年間の記事一覧

昨日

大学生のYさんがアパートの部屋に帰ってすぐ、疲れていたので床にごろんと横になった。夕食なににしようなどと考えながらうとうとしていると玄関のドアが開く音がする。鍵かけてなかったかと思いながらはっとして起き上がると、玄関には小学生くらいの女の子…

漏れ出たもの

Eさんは学生の頃、パソコンで絵を描くのが趣味で、作品をインターネットのイラスト投稿サイトに載せていた。彼女の作風は幻想的なもので、現実的な風景や人物に目を増やしたり腕を追加したりといった作品が多かった。ある時、Eさんは数日間かけて新しい作品…

工事と笛

建設会社に勤めているMさんの話。油圧ショベルで整地作業中のこと、エンジン音に交じって異質な音が聞こえることに気が付いた。どこから届くのか、笛の音だ。祭囃子のような、どこか物悲しいような懐かしいような響きが途切れ途切れに聞き取れる。同僚が作業…

霧中電車

Fさんは定年退職後にボランティアで小学生の登校見守り活動に参加している。毎朝通学路の途中の交差点に立ち、集団で学校に向かう小学生を見送るのだ。春先の朝のこと。前夜の雨のせいで霧が濃かった。いつものように交差点に立っていたが、見通しが極めて悪…

吹き流し

公園で盆踊りの会場設営中のことだという。作業をしていた自治会役員のひとりが、ふと声を漏らした。なんか変なの飛んでるな。それを傍で聞いていた人たちも空に目を向けると、確かによくわからないものが浮いている。布?細長いものがひらひらとたなびきな…

五枚の金属片

千葉駅で電車を待っていたときのことだという。プラットフォームの椅子に腰掛けてスマホをいじりながら時間を潰していたところ、ふと視線を手元から外すと足元でキラリと光が反射した。靴のすぐ傍に、親指くらいの大きさの長方形の金属片が五つ、落ちていた…

白い土塀

Fさんが職場から車で帰る途中に、気になる場所があるという。そこには白い土塀が道の脇に続いていて、それが途切れたところに階段が上っていて、その上には古いアパートが建っている。道の混み具合や曲がる方向の都合から、朝に職場へ向かうときにはそこを通…

姉の帰宅

Mさんが中学一年生、弟が小学四年生のときのこと。弟は居間でプラモデルを組み立てていて、Mさんはその脇でテレビを観ていた。両親は留守だった。ふと、弟が言った。兄ちゃん、お姉ちゃんいつ帰ってくる?Mさんはテレビを観ながら応えた。あー、もうそろそろ…

窓の風

十二月のある日、Jさんの自宅アパートの隣家が火事で全焼し、住んでいた高齢の夫婦が亡くなった。火事のときにはJさんは仕事中で自宅におらず、帰宅して初めて隣が焼けたことを知った。もうその時には鎮火済で、Jさんの住むアパートは外壁に煤が付いた程度で…

換気扇の声

Cさんは一時期長風呂をの習慣があった。湯に浸かりながらタブレット端末でSNSや動画サイトを流し見て、そのまま一時間近く過ごすことが多かった。そんなある夜、浴槽の蓋にタブレットを置いて動画を見ていると、時折音声が乱れる。「なあ、おい」そんな小さ…

妹の友達

Eさんが高校生の時、小学四年生の妹が事故で亡くなった。信号無視の車が他の車を避けようとして歩道にいた妹に突っ込んだのだ。両親の悲しみはそれは大きいものだったし、Eさんにとっても大きなショックがあった。妹には優しくしていたつもりだったが、高校…

足玉

Jさんが職場の近くの中華料理店で昼食を食べていた。カウンター席にいたので横目で入口が見える。とはいえ食事の最中は食べることに集中しているので出入りする客に注意を払うことはないのだが、食べ終わるタイミングでちょうど入ってきた客にはなんとなく視…

胴上げ

Rさんがコンビニエンスストアのアルバイトに出勤した日のこと。夜勤で夕方に店に行くと、駐車場の隅に男が六、七人ほど集まっている。照明に照らされたその風体が異様で、どれも泥や土埃でまだらに汚れた和服を着ている。服だけでなく顔も薄汚れているし、髪…

脚上げ

Mさんが大学生だったある日、友人の部屋に三人で集まって過ごしていた。するとベッドに腹ばいになってスマホを眺めていた友人がちょっとやめてよ、と言いだした。Mさんともうひとりがそちらに目を向けると友人が脚を上げている。何よ、ちょっと、と言いなが…