朝球

出勤途中に通る住宅街でのことだという。
何気なく視線を向けた電柱の上に、丸いものが乗っている。そのまま通り過ぎようとして、どうも気になって足を止めた。
バレーボールくらいの大きさの白い球だ。子供が遊んでいてボールが引っかかってしまったのだろうか。
あんな高さまでボールを飛ばせるだろうか。だが中学校の頃を思い返せば体育館の高い天井の鉄骨にボールが引っかかっていたこともあったので、中学生以上の力なら電柱の上にだってボールが届くのかも知れない。
そんなことを考えているとカラスが飛んできて、その電柱の近くに止まった。その途端に白い球がカラスを避けるように飛び立ち、道路を越えて反対側の家の屋根に下りた。
ボールが飛んだ!? UFO!?
白い球はそのまま小刻みにぴょんぴょん飛び跳ねながら屋根を飛び越えて見えなくなった。まるで生き物のような動き方だった。
それ以来外を歩くときに電柱の上をつい見てしまう癖がついたが、あの白い球を見たのはあれ一度きりだという。