光るゴミ

朝七時過ぎ、出勤途中のことだという。
家から駅まで行く途中の道端に、その地区のゴミ収集場がある。
そこを通りかかると、なにやらゴミの中がぼんやり明るい。
そのあたりは建物の陰になっているから、毎朝暗いのが普通だ。それが何かの光に照らされている。
収集場は高さ二メートルほどの鉄の箱で、正面に金網を張った扉がついている。
扉越しに見えるゴミの中に、光る丸いものが見えた。
ゴミは市の指定ポリ袋に入れて出さなければならないが、その丸いものは袋に入れられていないまま、他のゴミの袋の間に挟まっている。
バスケットボールくらいの大きさの球体で、表面は滑らかな曲面だ。それが白っぽく光を放っている。
はじめは照明器具だろうか。電池が入っていて、捨てられてから何かのはずみでスイッチが入ってしまったのだろう。
でも粗大ごみは別の日だし、置いてあっても回収はしてくれないだろうな、と考えながらその前を通り過ぎようとした時、ゴミの中でガサガサッと音がした。
カラス対策に収集場の扉は閂がかかっているから、動物がゴミを漁っているとすればネズミか何かだろうか。
何がいるのか見てみようと金網に顔を近づけると、そのすぐ目の前にあの丸いものが飛び出してきた。
光る丸い物体は一度勢いよく路面で弾んでから、反対側の塀の向こうに消えた。
数秒間呆気に取られたが、すぐにいくつかの疑問が浮かんだ。
ゴミ収集場の扉は閉じたままだ。金網の目はどう見てもあの丸いものより小さい。どうやってあれはこの中から飛び出したのだろうか。
しかも飛び出して道路で勢いよく弾んだのに、全く音がしなかった。ボールか何かだったら弾む音がしたはずなのに。
ガサガサ音を立てていたのもあの丸いものなのだろうか。


丸いものの正体が気になったものの、どうにも得体が知れない。
塀の向こうを覗き込むのも不気味に思えて、足早にその場を立ち去ったという。