写真週刊誌

Tさんが中学生のときのこと。
ある日の放課後、部活動が休みだったのでTさんは友達と遊びに行くことにした。
一旦家に帰ってから友達と合流し、自転車で買い物に行く途中。
道端の草むらがガサガサッと音を立てたと思うと、バサッと何かが前方の路上に飛び出した。
咄嗟に自転車を停めてよく見てみると、それはどうやら薄汚れた雑誌で、表紙に誰かの写真やら大きな見出しやらがびっしりと載っている。写真週刊誌のようだ。
誰かが草むらの向こうからこれを放り投げたのかと思ったが、周囲にTさんたち以外の人の姿はない。
草むらにしてもそう深くないので、隠れられるのは精々ウサギくらいだ。
一体誰がどこからこれを投げたのだろうか。Tさんたちは首をひねったが、遊びに行く途中でもあるので、深くは考えずに通り過ぎようとした。
また自転車をこぎ出そうとしたところで、またバサッと音がした。反射的に視線を向けると、先程の雑誌がバサバサと音を立てて跳ねている。
大きく開いた雑誌はカエルか何かのように元気よく跳ねながら、唖然とするTさんたちの目の前を横切って反対側の草むらに飛び込んだ。
草むらに飛び込んだときのガサッという音を最後に、辺りはすっかり静まり返ってもう何も動くものはなくなった。


何あれ?
さあ……。


ぽかんと顔を見合わせたTさんたちは、そのまま無言でそこを立ち去った。
雑誌が消えた草むらを探ってみたい気持ちもあったが、何となく誰かに見られていそうな気がして、その場に留まりたくなかった。
後で友達とこのときの話をしたところ、友達も同じように感じていたのだという。