バックモニター

市内に新規オープンしたスーパーマーケットにEさんが買い物に行ったときのこと。
開店翌日の日曜日、流石に客が押し寄せている様子だった。
駐車場の入り口でEさんは守衛に止められた。もう満車だから、道なりにもう少し行ったところにある臨時駐車場に駐めてくれという。
言われた通りにそちらに向かうと、Pと書かれた立て看板があり、そこに入ると砂利が敷かれた広いスペースになっていた。他に十台くらいの車が駐められていたが、それでもまだ半分以上は場所が空いている。
すし詰めの駐車場よりこっちの方が駐めやすくていいな、と思いながらEさんは他の車から離れたところに駐めようとした。
そうしてバックで端に寄せていったところ、はっとしてブレーキを強く踏んだ。
Eさんの車にはバックモニターが付いている。バックするときに、後方のカメラ映像が運転席のモニターに映し出されるのだ。
この時もモニターを見ながらバックしていた。するとモニターの中央に、向こうを向いてしゃがみこんだ子供が映ったのだ。幼い男の子だ。
車の後ろに子供がいる!
慌ててブレーキを踏んだEさんは、駐車位置をずらそうともう一度前進した。
危なくないようにあの子供から離れた位置に駐めないと、とそこから反対側に移動して車を反転させ、またバックで駐めようとした。
そしてバックモニターを見たEさんは目を疑った。
また子供がしゃがんでいるのだ。さっきと同様にこちらに背を向けて。髪型や服装はさっきの男の子と同じように見える。
流石にこれはよくない。あんな小さい子供が一人でスーパーに来るとは考えられないから親と一緒に来たのだろうが、子供を一人で、しかも駐車場で遊ばせておくなんて危険すぎる。
注意して親のところに行かせるか、あるいは守衛に言ってなんとかしてもらうか。
そう考えながら一旦車を降りたEさんだが、見回しても子供の姿がない。
他の車からは離れているからこんな数秒で隠れられるような場所もない。
車の周りを一周したが結局誰もいないので、ため息をつきながらEさんは運転席に戻り、改めて車をバックさせようとした。
――いる!
モニターにはまたしてもしゃがんだ子供が映っている。数秒前には確かに誰もいなかったのに。
しかもあの子、さっきからこちらに背を向けてしゃがんだまま、じっと動かない。
あれは――本当に生きている子供なのだろうか?


バックではなく前進で駐めることも考えたが、それだと帰るときにバックで出る必要がある。そのときにあの子がまた出たらどうしようもない。
Eさんはもうそこに車を駐めるのは諦めて、買い物をせずにまっすぐ家に帰った。