妹の友達

Yさんが大学生の時の話。
休日に家で過ごしていると、Yさんの当時高校生の妹が友達を連れてきた。
文化祭の出し物の打ち合わせをするということで、女の子ばかり四人が妹の後に付いて玄関から上がってきた。
リビングにいたYさんは会釈したが、妹が連れてきた四人の中で頭一つ背が高い子がいた。その子は特に気さくにYさんに対してにっこり笑って会釈を返してきて、Yさんはその子が特に印象に残った。
妹たちはそのまま妹の部屋で賑やかに話し始めた。


あんなに背が高い子だったらバレー部かバスケ部かな……。
そんなことを考えながらYさんがのんびりしていると、一時間半ほどで妹たちは部屋から出てきた。
必要なものを買い出しに行くと言う。
自分も高校の文化祭で色々準備したなあ、と思い出しながらYさんは玄関に向かう妹たちを見ていたが、そこには妹を含めて四人しかいなかった。先程の背の高い子の姿がない。


あれ、一人先に帰ったの? あの背の高い子。
そう何気なく尋ねると、妹は訝しげに言う。


は? みんないるじゃない。
いや、さっき家に来たときにはもう一人いただろ。すごく背の高い。
え? そんな子いなかったけど。
……話が噛み合わない。
いなかったと言われても、Yさんは確かにその子に会釈されたのを覚えている。
しかし思い返してみると、印象に残っているのは背の高さとにっこり笑った口元くらいで、髪型や服装など具体的な容姿は何一つ思い出せなかったのだという。