墓参り

Nさんのところに息子夫婦が八歳になる孫を連れて訪ねてきた。
たまにしか来ないので墓参りにも行っておこうと、Nさん宅から徒歩十分ほどのところにある墓地に皆で歩いていった。
花と線香を上げてさあ帰ろうとすると、たった今までいたはずの孫の姿が見えない。
周囲の墓石の陰も覗き込んだものの、一向に見つからない。
なんてことだ、と近所に住むNさんの弟一家にも声をかけて周囲を探し回った。
このまま見つからなかったらどうしよう、用水路に落ちでもしたら。
すると三十分ほどしてNさんの弟の奥さんから電話があった。
孫を見つけたから連れていくという。
ほっと胸を撫で下ろしたNさんたちはすぐに家に引き上げた。
すると玄関先に孫がぽつんと立っている。
もう戻っていたのか、とみな涙ぐみながら駆け寄ったが、孫は不思議そうにぽかんとしている。
孫の話によると、お墓で隠れてみんなを驚かせようとしたが、いつの間にかみんながいなくなってしまったので一人で帰ってきた、という。
……一人で帰ってきた? それでは先程の電話はどういうわけだ?
一体どういうことだろう、と詳しく問いただしてみても、孫はお墓から家まで誰にも会わなかったと言う。


そこで弟の奥さんからまた電話があった。
酷く慌てた様子で、またいなくなってしまった、という。
お墓のすぐ近くの寺で孫を見つけ、車の後部座席に乗せたものの、走り出してすぐにいなくなっていることに気がついた。ドアが開いた気配もなかったのに、いつの間にか消えてしまったようにしか思えなかったという。