吹き流し

公園で盆踊りの会場設営中のことだという。
作業をしていた自治会役員のひとりが、ふと声を漏らした。なんか変なの飛んでるな。
それを傍で聞いていた人たちも空に目を向けると、確かによくわからないものが浮いている。
布?
細長いものがひらひらとたなびきながら、住宅の屋根の上空に浮かんでいる。
飛んでいるというよりは空中に固定されているように位置を変えない。同じ位置で風に吹かれている。
こいのぼりと一緒に揚げる吹き流しのように見えるが、端が少し膨らんでいびつな形だ。
近くに比べるものがないから大きさはよくわからないが、数メートルはありそうだった。
そんなよくわからないものが西日を受けてオレンジ色に染まっていた。
なんだろうなあれ、と言い合っていたものの、設営作業がまだ途中だ。空を見上げ続けているわけにもいかない。
スマホで写真を撮ってから作業に戻ろうと思ったちょうどその時、吹き流しがスッと動いた。
端の膨らんだほうを下にするように向きを変えたと思うと、その膨らんだあたりから二本の腕、のような突起が生えた。
そしてそのままの向きで急降下してあっという間に見えなくなった。
ドローンとかそういう動きにはとても思えなかった、という。
一同は呆気に取られてそれが落ちていったほうを眺めていたが、すぐに我に返って会場設営の続きに取り掛かった。
その近辺で何かが空から落ちてきたという話はその後も聞こえてくることはなく、結局あれの正体は不明のままだという。