Fさんが職場から車で帰る途中に、気になる場所があるという。
そこには白い土塀が道の脇に続いていて、それが途切れたところに階段が上っていて、その上には古いアパートが建っている。
道の混み具合や曲がる方向の都合から、朝に職場へ向かうときにはそこを通らず帰宅するときにだけそこを通るのだが、アパートに灯りが点いているところを見ないのでどうやら無人のようだという。
その場所の何が気になるのかというと、そこを通るとなぜか決まって背筋がざわざわする。何か得体のしれない不快感で、背中の産毛が逆立つような、毛穴が開くような感覚があるという。
それと同時に、階段から何かが下りて道に飛び出してくるような気がしてしまい、思わずブレーキを踏んでしまう。
ところがそちらに目をやっても、階段には誰もいない。気のせいだったと安心してそこを通り過ぎる。
そんなことが毎日ではないが、週に何度かあるのだという。
本当にそこで何かが飛び出してきたことは一度もない。ところが気配というか圧迫感というか、背筋がざわついたときには本当に何かが出てきそうに思えて仕方がない。
何も感じない日はそこを素通りして、家まで来てようやくああそういえば今日は何も感じなかったなと思い返すくらいに何も気にならない。
いつか本当に何かが飛び出してくることがあるのだろうかと心配しているとFさんが言うので、そこを通るのをやめたらどうですかと返事した。
するとFさんは照れくさそうな顔をした。それがちょっと見てみたい気もしてるんですよね、何が出てくるのか気になるじゃないですか。そう言って笑う。
今でもFさんは毎晩そこを通っているらしい。