背中の下

学生のFさんが自室でレポートを書き上げた。
炬燵に足を突っ込んで胡座をかいた姿勢でずっと書き物をしていたので、もう背中も足も限界だった。
ひと仕事終えた開放感もあって、足を伸ばしながら大きく伸びをして、そのまま後ろに倒れ込んだ。
その瞬間。
「うぎゅっ」
誰かの苦しそうな呻き声が部屋に響き、同時に背中には何か脆いものを潰すような感触があった。
驚いて咄嗟に立ち上がったFさんだったが、背中にも床にも何かを潰した痕跡はない。
タイミングから考えても背中で何かを潰して、その何かが呻き声を上げたようにしか思えなかったが、潰れているものは何もなかった。
ただ、Fさんにはどうにもあの呻き声が気になった。
どうも懐かしいような、どこかで聞いたことがある気がする声だったという。