冷蔵庫

高校の授業で調理実習を行ったときの話だという。
材料はあらかじめ家庭科の先生がまとめて買っておいて、調理室の前にある冷蔵後にしまってあった。
授業の直前、班ごとに材料を配るために先生が冷蔵庫を開けたが、その直後なぜか勢い良く冷蔵庫のドアを閉めた。
先生はひどく驚いた様子で冷蔵庫から後ずさっている。
クラスの半数ほどの生徒が調理室に来ていたが、先生の様子がおかしいので視線がそちらに集まった。
すると冷蔵庫のドアがひとりでに開き、中から真っ黒なかたまりがズルッとはみ出してくる。
音もなく床に降り立った黒い何かは人の形をしていたが、全体が真っ黒で顔も様子も全くわからない。
背丈は高校生たちと変わらないくらいだったという。
何あれ?と呆気にとられる生徒たちの目の前をその黒い何かはスタスタ歩いてあっという間に調理室から出て行ってしまった。
直後、調理室は騒然となった。
奇妙なのは、後から調理室に入ってきた生徒は廊下でそんなものは見ていないということだった。
冷蔵庫の中の食材はなぜか全てびっしりとカビが生えており、調理実習は延期になったという。