午後のロッカー

小学校で昼休み終了直後のこと。
授業を始めようとしたところで、席が一つ空いていることに先生が気づいた。
その席のF君は午前中の授業には出席していたし、給食のときにもいた。保健室に行ったという話も聞いていない。
誰かF君のこと知ってる人は? と聞いたが児童たちは顔を見合わせるばかりだ。
そのうちにひとりの児童が教室の後ろの掃除用具入れのロッカーを指さした。ロッカーの扉にチェック柄の布が挟まってわずかに出ている。
確かF君がそんな柄のシャツを着ていた。さてはロッカーの中に隠れていて、シャツの裾が扉に挟まっているのか。
先生がロッカーに近づいていくと、布がズルッと中に引き込まれた。すぐに先生がロッカーを開ける。
F君はいなかった。いつも通り掃除用具が詰まっているだけで、チェック柄のシャツもない。
扉以外からロッカーを出ることは不可能だ。見ていた誰もが不思議がった。


後からわかったことだが、F君は昼休み中に友達と喧嘩してグラウンドの端に隠れて泣いていただけで、ロッカーのことなど知らなかった。
扉からはみ出していたチェックの布が何だったのか、誰にもわからずじまいだった。