砂山

Yさんが中学生の時の話。
当時、昼休みには仲の良い数人でサッカーやキャッチボールをするのが毎日の楽しみだった。
その日の昼休みも同様にそうやって遊んでいたのだが、その日はいつもの仲間が一人少なかった。
クラスメートのM君が朝から学校を休んでいたのだ。
M君以外のメンバーでグラウンドに出てサッカーをしていると、仲間の一人がグラウンドの隅の方を指差した。
あれ、Mじゃねえの?
他の皆がそちらを見ると、確かにM君らしき人影が、グラウンドの隅にある並木に寄りかかって立っている。
学校に来たなら、あんな離れた所で見ていないで混ざればいいのに。
そう思ったYさんたちは、M君に向かって手を振りながら呼びかけたが、M君はじっと立ち尽くしたまま何の反応も示さない。
その態度に少し腹を立てたYさんたちは、直接話をしようとMさんの方へと駆け出していった。
すると奇妙なことに、近付いていくにつれて何やらM君の姿から急に色彩が失われていくような気がした。
何かおかしい――と思いながらも駆け寄って行ったその時、M君の体がぼろりと崩れ、その場に潰れてしまった。
うわっ!
げっ!
言葉にならない声を上げながら恐る恐る近寄ってみると、M君が立っていた木の側には、湿った砂が小さい山のように盛り上がっていた。
どうやら、たった今M君だと思っていたものは、この砂が人の形に積みあがっていたものらしい。
……ということは何とか理解できたのだが、遠目に見たときは確かにM君そのものにしか見えなかったのだ。
それに、なぜそんな所に砂が積み上げられているのかがわからない。
M君が砂に変わってしまったとしか思えなかった。
すぐに担任の先生にこのことを報告したのだが、信じてはもらえなかった。


M君はその日からずっと体調を崩して学校を欠席し、二ヶ月後に療養のためということで転校していったという。