赤光

深夜、Fさんがベッドに横になってなんとなく寝返りをうったところで、赤い光が部屋に差した。まぶたを閉じていてもそんな感じがしたのだ。
薄目を開けると部屋の反対側に小さな赤い光が横一直線に並んでいる。数えたら八個あった。何かの機械のランプが点いているようだ。
しかしそんな光を出すような機械に心当たりがない。一体何が光っているんだろう。
気になってベッドの脇のスタンドライトを点けたが、同時に赤い光は見えなくなった。
部屋を見回してみてもあんなふうに光りそうなものはやはりない。
特に異常があるようでもないし、戸締まりもしっかりしている。少し気にはなるものの、その夜はまたすぐ寝た。


数日後、仕事帰りに車を運転していたFさんは、また横一直線に並んだ赤い光を目撃した。
といっても今度は何が光っているのかよくわかった。前の車のリアガラスの内側にある、ブレーキランプだ。
車のブレーキランプなど他にいくらでも目に入ってくる。しかしFさんにはなぜか、前の車のランプと数日前に部屋で見た赤い光が全く同じものに思えて仕方がない。
何かあるのかもしれない。どうにも嫌な感じがした。
とりあえず前の車から一旦距離を取ろうと、Fさんは道沿いのコンビニに寄り道し、ゆっくり店内を回ってから飲み物を買って出てきた。
一呼吸してから道路に戻り、少し進んだところで急に渋滞に突き当たった。普段はそこまで混まない道なのに、このときは二百メートルほど先の交差点まで二十分近くかかってしまった。
渋滞の原因は交通事故らしく、二台の車がフロントを酷く歪ませた状態で交差点の中ほどに停まっていた。
それを見てFさんはああそうかといたく納得したという。
事故車の片方は先程すぐ前を走っていた、あのブレーキランプの車だった。