寝言

高校のバレー部が合宿した夜のこと。
六人ひと部屋で寝ていると、一人が何かブツブツ言い始めた。
隣で寝ていた二人はうるさくて目を覚まし、静かにしろ、寝れんだろと文句を言った。だが彼は一向に構わない様子でむにゃむにゃと言葉にならないような声を発し続ける。
顔を見ると瞼を閉じたまま口だけ動かしており、揺すっても反応がない。これは寝言か。
うるさいから一度起こすかと名前を呼びながら肩を叩いたが、それでも寝言は止まらない。
暗くて顔はよく見えないが、寝たふりをしてふざけているのではないか?
とりあえず部屋の明かりを点けて顔を見てやろう。一人が立って壁のスイッチを入れた。
途端に寝言が聞こえなくなった。
それだけではない。寝言を続けていた本人もいなくなっている。
人の形に膨らんでいた布団がパサッと落ちた。
あいつどこへ消えた?
それまで眠っていた他の三人も明かりのせいで目を覚ました。彼らに経緯を説明しているところで廊下から誰かが入ってきた。
いなくなっていたあの一人だ。

お前、どこ行ってたんだ。

トイレだけど。
明かりを点けたあの一瞬で部屋からどうやって出ていったんだと尋ねると、みんなぐっすり寝ていたので起こさないように部屋を出たんだ、という。
話が食い違っている。

寝言なんか知らない、部屋を出たときには確かにみんな眠っていたという。
もし本人の言葉が正しいならば、あの寝言を言っていたのは誰だ。なぜ消えた。
誰にも辻褄の合う説明はできなかった。