ノノノノノノノノ川llllllll

Fさんが小学生の夏、お父さんの実家に行った時のこと。
夜は仏間に布団を敷いて、お父さんお母さんと川の字になって寝た。
夜更けにFさんは尿意で目を覚ました。
しかしいつもと違う家がどうにも怖い。
田舎だから外も暗いし、しんと静まり返って何の音も響いてこない。
ひとりで廊下の先にあるトイレに行く勇気がなかった。
しかし急がなければ漏れてしまいそうだ。
お父さんかお母さんを起こして一緒に行ってもらおうと考えたFさんは体を起こしたが、左右を見て仰天した。
隣に寝ているお父さんの向こう側に、いつの間にか無数の布団が並んでいてその全てにお父さんが仰向けに寝ている。
反対側を見れば、やはり何人ものお母さんがずらりと並んで寝ている。
なんでこんなに多いの?
混乱しながらFさんは立ち上がって蛍光灯の紐を引いた。
ぱっと部屋が明るくなったが、やはりお父さんとお母さんはたくさんいて、みんな同じ顔と体勢で寝ている。
そもそもどういうわけか部屋がかなり長い。寝る前はただの六畳間だったのに、今はなぜか数十メートルはありそうな細長い部屋に拡大していて、その端までお父さんとお母さんの眠る布団がひたすら続いている。お父さんもお母さんも全部で何人いるのかわからない。
一番手前のお父さんお母さんを起こそうかとも思ったが、もしそれでお父さんたちとお母さんたちが一斉に目を覚ましたらそっちの方が怖い。
これは夢かな? と首をひねったFさんだったが、とりあえず尿意が切羽詰まってきたのですぐそばの引き戸から部屋の外に出た。もうトイレに行く程度のことなど怖いとは思わなくなっていた。
幸いにして廊下は特に変わったところはなく、Fさんは用を足して部屋に戻ってきた。
恐る恐る仏間を覗き込むと、灯りは点いたままだったが、お父さんとお母さんは一人ずつしかいなくなっていて、部屋の広さも元に戻っていたという。