貝掘り

友人と一緒に海に貝掘りに行った人の話。
砂が盛り上がっているところを狙って掘るとアサリがいる。このあたりかなと目星をつけて砂地を掘っていると、硬いものに当たった。
砂をどけると確かにアサリだ。ごろごろと二十を越えるくらいの数は固まっている。これはしめたぞ、とまとめて掘り出して持ってきたバケツに入れた。バケツを持ち上げるとずっしり重い。
こんなにいたよ、と少し離れたところで掘っていた友人に見せに行ったところ、バケツを覗きこんだ友人は変な顔をした。

 


ここまで来て何拾ってるんだ?

 

そう言われてバケツを見ると、中にあるのはアサリなどではなかった。
真っ赤に錆びた古釘が数十本、どっさり入っている。

いつの間にすり替わったのだろう。さっき掘り出したのは確かにアサリだったはずなのに。
しかし埋め戻すのも気が引ける。釘は他所に捨てることにしたものの、結局その日は全く貝が採れなかったという。