妹の友達

Eさんが高校生の時、小学四年生の妹が事故で亡くなった。信号無視の車が他の車を避けようとして歩道にいた妹に突っ込んだのだ。
両親の悲しみはそれは大きいものだったし、Eさんにとっても大きなショックがあった。
妹には優しくしていたつもりだったが、高校生と小学生だから生活のタイミングがずれることも多く、近頃はゆっくり話もしていなかった。こんなことになるんなら、もっと接しておけばよかった。そんな後悔がみぞおちのあたりに重く固まっていた。
葬儀が終わって数日経った頃、Eさんが学校から帰ってすぐ、インターフォンが鳴った。玄関の前には妹と同じくらいの年頃の女の子が立っている。
話を聞くと、妹の友達だという。落ち着いた印象の子だった。
葬儀に来られなかったからお線香を上げに来ましたというので、Eさんは礼を言って客間の祭壇に通した。
女の子は行儀よく座ると線香を上げ、静かに手を合わせた。
妹の死を悼んでくれることが嬉しかったので、女の子が祭壇から身を引いたところでEさんは話しかけてみた。学校での妹の思い出など尋ねると、女の子は寂しそうに微笑みながら、いくつかのエピソードを語ってくれた。
また来てね、妹も喜ぶと思うからとEさんが女の子に言うと、女の子はその言葉の通りにそれからも週に一度くらいの頻度でやってきて、線香を上げていった。そしてぽつぽつと妹の思い出や学校の話をして帰ってゆく。
来るのは決まって夕方で、それもEさんがひとりで家にいるタイミングに限られていた。
だからEさんが両親にその女の子のことを話したとき、両親は彼女が来たところを一度も見ていなかった。何ていう子が来てるの、と母が訊くのでEさんは答えようとしたものの、言葉に詰まった。
それまで五回ほど線香を上げに来て、名前も住んでいる地区も本人から聞いたはずなのに、いざ思い出そうとすると言葉にならない。思い出せないのだ。
確かに聞いて、今の今までわかっていたはずなのだが。
そこで母が知っている限りの妹の同級生の名前を聞いたり、妹のPTA資料で同級生の名前を調べたりしたものの、それらしき名前がない。
どういうわけかその女の子が訪ねてくることはそれ以来絶えてしまって、結局誰が来ていたのか謎のままだ。