八月の末頃の話だという。
Rさん夫婦がしばらくぶりに訪ねてきた妹を連れて外に夕食をとりに行った。その帰り、車を運転しながらRさんはふと道の脇に変わったものを見つけた。
道端のベンチにクリスマスツリーが置かれている。
八月にクリスマスツリーというのもおかしいが、人の背丈よりいくらか高いくらいの針葉樹にカラフルな電飾が巻き付いていて、チカチカ明滅している。クリスマスツリーそのものだ。
なんで今頃あんなものが? 気になったRさんはスピードを緩めながら妻と妹に話しかけた。あれ見てよ。誰があんなの置いたんだろうな。
すると後部座席から妹が鋭い声を上げた。だめっ! 早く行って!
助手席の妻も小刻みに頷きながら、いいから早くと言う。
様子がおかしいとは思ったが、とりあえず二人の言う通りにスピードを上げてその場を通り過ぎた。サイドミラーの中でツリーの電飾が遠ざかっていく。
家に着いてからさっきのことを尋ねると、妻と妹は青い顔で口を揃えた。
ベンチの前に変な人座ってたじゃない。顔も服も緑色の、背の高い。普通じゃなかったよ。まっすぐこっちを見てた。
あそこで止まったりしてたらどうなってたかわからないじゃない。どうして止まりそうになってたの。
Rさんは意味がわからなかった。ベンチのところで見たのは電飾の着いた木で、確かに緑色ではあったが、どう見ても人には思えなかった。
それに二人とも妙に怯えている。二人の言う通り全身緑色の人がいたとして、そこまで怖がるようなものだったのだろうか。何がそんなに怖かったのだろう。
どれだけ詳しく尋ねても何が怖かったのかよくわからなかった。
確かに同じ場所のベンチの話をしているはずなのに、Rさんと女性二人とでは見たものとその印象が全く食い違っていた。それが不思議でならなかったという。