夕方のことである。
外から四歳の娘の呼ぶ声が聞こえたので、Rさんが自宅から外に出てみると、ちょっと珍しいほど鮮やかな夕焼けが見えた。
まるで火事かというくらいに真っ赤に町並みが染まっている。娘の姿も真っ赤だ。
きれいだねえ、と西の空を見上げながら娘と手を繋ぐと、次第に違和感を覚えた。
この子の手、大きくなった?
成長したという意味ではない。握った瞬間は子供らしい柔らかい手だったのに、だんだん骨ばった手になったように思える。
なんだろうこの感覚は、と怪訝に思いながら娘に目を向けると、Rさんと手を繋いでいたのは知らない女だった。
三十代くらい、Rさんと同じくらいの年格好の女だ。知り合いではない。
しかし真っ赤な夕焼けを眺めるその横顔は、どこか見覚えがあるような気もする。
反射的に手を放した。
その途端。
音を立てるように、一斉に周囲の鮮やかさが失われた。あっと空を見上げると、まだ空は夕焼け色だったが、先程の燃え上がるように鮮やかな夕日ではなかった。
薄紙を間に挟んだような、ぼんやりとして曖昧な空だった。
すぐに視線を隣に戻すと知らない女の姿はもうなかった。見回してもどこにもいない。
娘の姿もない。
はっとして名前を呼ぶと、娘は家の中からすぐに出てきた。
話を聞くと、娘はずっと家の中にいたという。
それではあのとき外から呼んだのは誰だったのか。あれが娘の声だったのかどうか、後から思うとRさんは自信が持てなかった。
もうひとつ気になったのは、あの知らない女の横顔だ。知らない顔ではあったが。
どことなくあの顔がRさん自身に似ていたように思えてならないという。