双子

Uさんが大学に入ったときのこと。入学式の翌日は学科ごとのオリエンテーションで、Uさんも他の新入生たちに交じって参加した。
学科の先輩の話を聞きながら他の新入生の姿を眺めていると、少し離れた席に少し気になる二人組がいた。
そっくりな顔をした二人の女の子だ。服装は多少違っているが、顔や髪型は瓜二つ。同一人物かというくらいに同じ顔をしている。
どう見ても双子だろう。双子で同じ大学の同じ学科に入ったのか。
オリエンテーション中はUさんがその双子と話す機会はなかったが、そちらに目をやるといつも二人並んでいる。同じ進路を選ぶくらいだから仲もいいのだろう。
その後、講義が始まってからUさんは必修科目のいくつかでこの双子の片方と同じ授業になった。
授業が進むうちに彼女と会話をするくらいには親しくなったが、話が噛み合わないところもあった。双子の姉妹について聞くと、自分は一人っ子だと言うのである。
じゃあオリエンテーションで一緒にいた子は姉妹じゃなくて従姉妹とか、他の親戚? そう尋ねたが、彼女はそれも否定する。
オリエンテーションで誰かと一緒になど行動していなかったというのだ。
しかしあれほど瓜二つだったのに双子や親戚でないということがあるのか。そもそも一緒にいたこと自体を否定するのもおかしい。
Uさんはオリエンテーション以外でも、何度か学内で二人が並んで歩いていたのを見かけたこともある。
冗談を言っている様子もないし、隠しておきたい理由でもあるのか。
そこでUさんは今度学内で彼女たち二人が一緒にいるところを見たら、写真か動画を撮っておこうと決めた。それを見せてやれば、少なくとも存在を否定することまではしないだろう。
そのチャンスはすぐにやってきた。昼休みの学内で、二人が一緒に歩いているところを見つけたUさんは早速スマホで写真を撮った。
ところが。
何度撮っても、画像には一人しか映っていない。確かに二人並んでいるのが見えているのに。
Uさんは思い切って直接二人に話しかけることにして、追いかけた。
追いついたときにはどういうわけか、相手は一人しかいなかった。息を切らして走ってきたUさんに彼女は怪訝な顔をしたが、Uさんには何とも説明ができなかった。


Uさんはそれから卒業までの間にも、学内で彼女が二人並んでいるところを何度も見かけた。

そのうちにあることに気がついた。見かけるのは二人が並んでいるところだけで、二人が言葉を交わしているところは一度も見ていないということに。