隣の教室

高校で三年生が授業中のことだという。
バタバタバタッ、と数人が廊下を走っていく足音、そして隣の教室のドアを乱暴に開ける音が響いた。
足音の主たちは隣の教室の中へなだれ込んでいき、なにやらバタンバタンと跳ね回っているようだ。机や椅子を引きずるような音もする。
隣のクラスはちょうど修学旅行で留守中の二年生だ。一体誰が騒いでいるのだろうか。騒がしい足音からすると、教師ではなさそうだった。
隣が急にうるさくなったので授業中の先生が眉をひそめた。ちょっと見てくる、と言って先生は廊下に出ていく。
先生が出ていっている間も、隣の教室からはドスンバタンと大暴れしているような物音が響いている。
音は先生が戻ってきたタイミングで急に静かになった。
先生は首をひねりながら授業を再開した。生徒の一人が手を挙げた。先生、隣は何やってたんですか?
それがな、誰もいなかったんだ。と先生は言う。廊下に出た瞬間にはもう騒々しい物音は鎮まっていて、隣の教室を覗いてみても誰もいなかったという。
しかし生徒たちは納得できなかった。先生が廊下に出ていって戻ってくるまで、隣から物音は続いていたのだ。辻褄が合わない。
先生が何かを隠しているのか、それとも先生は実際に何も見なかったのか。

 


授業が終わってから何人かの生徒は隣の教室を見に行ったが、あれだけ暴れ回るような音が響いていたのに机や椅子は整然と並んでいたという。