強風

高校のサッカー部がグラウンドで練習していたところ、急に強い風が吹き付けてきた。
もともと朝から風の強い日だったが、ひときわ激しい突風だったので部員たちはたまらずに足を止めた。
すると風に飛ばされてきた落ち葉が、風の渦か何かのためか、サッカーコートの一箇所にみるみるうちに吹き寄せられてきた。しかもそれがどんどん高く積み重なってゆく。
数秒して風がふっと止んだ時には、どういうわけか落ち葉は奇妙な形に積もっていた。まるで小さな人が立っているような形だ。部員たちの膝くらいの高さしかないものの、確かに人が立っているように見える。どうやったら自然に落ち葉がそんな不安定な形に積み上がるのだろうか。
部員たちは意外な出来事に声を上げ、積み上がった落ち葉へ駆け寄っていった。


何だあれ!
キモい!
すげえ!


視線がそこに集まる中、一人の部員がふざけて落ち葉めがけてボールを蹴り込んだ。
ボールは落ち葉に命中し、落ち葉はその勢いで飛び散……らなかった。
それどころかボールは硬い壁にでもぶつかったような音を立てて跳ね返り、落ち葉は人の形を保っている。
えっ? と部員たちが目を疑った次の瞬間、またしても強い風が吹き付けてきた。
今しがたボールを跳ね返したばかりの落ち葉は、今度は溶かされるように呆気なく人の形を崩し、またたく間に吹き散らされて跡形もなくなったという。