Eさんが友人数人と自宅のアパートで飲み会をしていた夜のこと。
つまみが少なくなってきたのでOという友人がコンビニまで買い出しに行くことになった。
Oが出かけてから別の友人が「なんかアイスも食べたくなってきたな」と言い出し、ついでにOに買ってきてもらおうということになった。
携帯電話でOの番号にダイヤルする。
着メロが部屋の隅から鳴り響いた。一同の視線がそちらに集まる。音はクローゼットの中から響いている。
なんだOの奴、携帯置いてったのか。あいつの携帯がなんでこんなところに?
首を傾げながらEさんがクローゼットを開けたものの、どこにも携帯がない。音はクローゼット内に響いて発信源がわからない。
そうしているうちに電話の向こうで誰かが出た。
Oだ。携帯を持っているのか?
クローゼット内には依然として着メロが鳴っている。
じゃあ何だこの音?
とりあえずOに要件を伝えて電話を切ると、その途端にクローゼットの音も止んだ。
何だったんだ一体。
どうにも納得できないEさんは友人たちがいるにもかかわらず、クローゼットの服を引っ張りだして音を出していたものを探したが、隅々まで見てもそれらしき物は見当たらない。
そうしているうちにOが買い物から戻ってきた。するとOは部屋を見回してこんなことを言う。
「あれ?女の子もう帰っちゃった?」
その日は元々男しか集まっていない。何を言っているんだ、という怪訝な視線がOに集中する。
「ごまかすなよ、ちゃんとわかってるんだって。電話の時に後ろで女の子の声が聞こえてたし。あんなに大騒ぎしてれば聞こえるに決まってるだろ」
Oと電話している時には他に誰も喋っていなかった。他に聞こえていたのはあの謎の着メロくらいのものだ。
話が噛み合わない。
「だって本当に聞こえてたよ?きゃーっとかいやーっとか、かなりはしゃいでたろ。電話の声が聞き取りづらいくらいだったし。俺のいないうちに随分盛り上がってるなと思って聞いてたんだけど」
それを聞いた別の友人がぽつりと言った。
「それって、盛り上がってたんじゃなくて悲鳴じゃね……?」