ぶら下がり

夜七時くらいのことだったという。
自宅のマンションに帰ってきてエレベーターに乗った。
他には誰も乗っていなかったし、五階で降りるまで誰も乗ってこなかった。
しかしエレベーターから出た瞬間、背後で咳払いが聞こえた。
えっ、誰?
咄嗟に振り向くと、今までEさんが立っていた辺りに、天井から白いものがぶら下がっている。
紙のようにペラペラなおじさんが逆さまに揺れていた。
目が合うと、おじさんは金魚のように口をぱくぱくさせて、そのまま天井に巻き上がって消えた。


翌日エレベーターに乗るのには勇気が要ったという。