埋葬

Yさんが高校生の時の話だという。
学校から帰ったYさんが部屋にいると、しばらくして帰ってきた父親が彼を呼んだ。
帰ってくる途中でタヌキが死んでいるのを見つけたから片付けるのを手伝え、と父親は言う。
渋々Yさんが父親に同行すると、家から歩いて十分足らずの道端に確かにタヌキの死骸が転がっている。
死骸とはいえ、Yさんが本物のタヌキを見たのはその時が初めてだった。
中型の犬くらいの大きさで、車に轢かれたのが死因なのか、頭の辺りが少し潰れていた。
持ってきたスコップで近くの林に穴を掘り、死骸を埋めた。


その三日後、Yさんは学校帰りに遠回りして本屋に寄ってから帰った。
そちらのルートだと、まっすぐ帰った場合とは違って先日タヌキを埋めたあの林の方を通ることになる。
林の前にさしかかってYさんはふとタヌキを埋めたことを思い出し、何気なく林の方に目をやった。
するとちょうどタヌキの墓のあたりに、子供が二人ほどしゃがみこんでいるのが見えた。
離れていて顔は見えないが、二人とも両手で地面をさかんに引っ掻いているようだった。
あんな所で砂遊びでもしているのか、タヌキを掘り出したりしないだろうな、とYさんは心配したが、そこでふと強い違和感を持った。
もう辺りはすっかり暗い。
そんな時間に子供が、林の中で砂遊び?
そもそも、暗い中でなぜあの二人の姿がよく見えるのだろうか?
Yさんはすぐに自転車の速度を上げると、もう林の方を見ないようにして急いで帰ったという。