危険な拾い物

現在大学生のFさんが小学三年生の時の話だという。
友達三人で下校中、リーダー格のT君が変な声を上げて道端にしゃがみこんだ。
すげえの落ちてるぞ、と言うのでFさんたちも覗き込むと、ガードレールの根本に黒い角張ったものが見えた。
鈍く黒光りする拳銃だ。
本物かな、エアガンだろ、などと口々に言い合ったが、すぐにT君が手を伸ばして拾い上げた。
重いぞこれ、本物かもよ。
手渡されてFさんも持ってみると確かにずっしりと重い。もうひとりの友達にも渡したところ、やはり重さに驚いている。
おもちゃの銃がこんなに重いだろうか。本当に本物なのかもしれない。
そう思うと、撃って確かめてみたいという気持ちが湧いた。小学生男子としては、本物だったら危険だという心配よりも好奇心のほうがずっと強かった。
後の二人も同じ気持ちだったようで、そのまま寄り道して近くの川に行くことになった。もし本当に弾が出ても、川の水面に向けて撃つなら危なくないだろうという判断だった。
いつも人気の少ない川だが、この時も都合よく誰の姿もなかったので、すぐにT君が両手で銃を構え、水面に向かって銃爪を引いた。
予想していた本物の銃らしい破裂音も、モデルガンらしい軽い音もしなかった。
代わりにT君が握っていたそれを情けない声とともに放り出した。
川べりの土に落ちたそれは拳銃などではなく、腐りかけた猫だった。急に悪臭が鼻をついた。
確かに拳銃を拾ったはずなのに、それが突然猫の死骸に変わった。どういうことなのかさっぱり理解できない。
拳銃を触った手がいつの間にか毛の混じった汚い汁でべたべたになっていて、みんな慌てて川の水で洗った。
うんざりしながら家に帰ったときにもまだ臭いが取れておらず、あんた外で何してきたの! とお母さんからひどく怒られたという。