居間 その二

そんなことがあってからまた少し後、日曜日に家族で出かける用事があった。
夕食も外で済ませ、暗くなってから帰宅すると居間にぼんやりと明かりが見える。
テレビが点いているのだ。
出かけるときに消してなかったのか、と父親が言ったが、Hさんは以前の体験を思い出していた。
気味が悪くてHさんは居間に入りたくなかったが、父親は無造作に居間に踏み込んだ。
暗い部屋の中には確かにテレビが点いていた。
そしてその明かりに照らされて、テーブルの脇に大きな何かが置いてあるのが見える。
父親が蛍光灯を点けると、そこにあるものがはっきりわかった。
人間大の藁束が、父親や母親の服を着せられて、座っているように置かれていたのである。


施錠は確かにされていたが、侵入者があった可能性が高いのですぐに警察を呼んだ。
幸い、盗られたものは特になかったようだった。
大きな藁束も警察によって調べられたが、中までただの藁の束だったらしい。
誰が何の目的でそんな悪戯をしたかは結局わからずじまいだったという。