筍掘り

Tさんが小学生の頃、お祖父さんが行方不明になった。
筍堀りに行く、と言い残して家を出てからのお祖父さんを見た者が誰一人いない。掘りたての筍が玄関先に置いてあったので一度家に戻ってきたらしいのだが、その時の姿を誰も見ていないし、それ以降の足取りが一切不明だった。
捜索願が出されたものの、田舎のことで目撃証言もほぼ皆無。しかしその捜査の過程で、大変なものが見つかった。お祖父さんが筍掘りに毎年行っていた山で、白骨死体が発見されたのである。竹林に埋もれていたのが、伸びた筍に押し上げられていたという。もしやお祖父さんではないかと思われたが、歯形から全くの別人と分かった。
白骨の主は二十年程前に行方不明になっていた人物ということだった。遺体が埋まっていたので変死体とみなされたらしいが、その後警察の調査でどういう結論が出たのかまではTさんも聞かされなかった。


それからもうじき二十年経つ。お祖父さんは未だ見つかっていない。ただ、Tさんは近頃ふと思ったことがあった。
――自分のお祖父さんもあの白骨のように、二十年経ってから出てくるのではないか。
見つけてしまうのが怖くて、例の竹林には近寄らないようにしているという。