三十六/ 盆の寒天(49/100)

私の父の話。
父の好物のひとつは寒天なのだが、ここ数年口にしていなかった。
それをふと八月の頭ごろに思い出して「寒天食べたいなあ、砂糖入れただけの単純なやつ」と思ったらしいのだが、特にそれを誰に言うこともせず、自分で作って食べることもしなかった。
少しして、盆になって遠くに住む父方の伯母がやってきたのだが、なんと寒天をタッパーに入れて持参してきた。
それも砂糖を入れただけのものである。
聞けば、十年前に亡くなった父方の祖母が二日ほど前に伯母の夢に出てきたのだという。
夢の中で祖母が「あの子が寒天食べたがっているから持ってってやんなさい。砂糖入れただけのやつだよ」と言うので、その通りにしたとのことだった。
父は喜んで食べていた。



(八月三十一日追記:ちょっと文章がわかりにくいので直しました)